【欧州サッカー時事解説】「第三者による選手保有の禁止」

カテゴリ:特集

片野道郎

2015年02月10日

移籍市場に影響を及ぼし、フェアな競争を歪めつつある。

メガクラブを袖にしてのファルカオのモナコ移籍(13年夏)は、さらなる転売を目論むドイエンスポーツの戦略との見方が有力。TPOの悪しき実例だろう。 (C) REUTERS/AFLO

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 3)に当てはまるのは、先に取り上げたファルカオの移籍。ポルト→A・マドリー→モナコという移籍のすべてに、直接、間接にドイエンスポーツが関わっている。
 
 しかも、ポルトからA・マドリーに4000万ユーロで移籍した当時、移籍専門サイト『transfermarkt』の算定による市場価格は2500万ユーロ(約35億円)にすぎなかった。60パーセントもの水増しをしたのは、移籍金を吊り上げることで手に入れる利益を上乗せしようとの狙いがあったからだろう。
 
 また、A・マドリーからモナコに移籍した時には、複数のメガクラブが獲得に乗り出していたにもかかわらず、あえてチャンピオンズ・リーグどころかヨーロッパリーグの出場権すら持たないモナコと契約するという不可解な選択がなされている。
 
 これは、本人の意思以上に保有権を持つドイエンスポーツの意向が反映された結果と見るのが可能だろう。メガクラブに移籍してしまえば、次の移籍でそれ以上の利益を得るのは簡単ではないが、モナコという「踊り場」を使えばもう一儲けできるという算段だ。
 
 このように、TPOはさまざまな形で移籍市場に影響力を及ぼし、フェアな競争を歪めつつある。これまで消極的とはいえ容認の姿勢を見せてきたFIFAが、ここにきてUEFAに同調する形で禁止の方向性を打ち出したのも、こうした問題に目をつぶっていられなくなったからだろう。
 
 TPOはヨーロッパではポルトガル、スペインで普及しつつある一方、イングランド、フランス、イタリアなどでは認められていない。
 
 しかし南米では80年代から広く普及しており、とくにブラジルでは大半の選手の保有権に投資ファンドが関わっていると言われる。したがって、すぐに全面的に禁止するというのは、現実的には不可能だ。
 
 FIFAが、数年かけて段階的に禁止していく方針を打ち出したのもそれゆえ。すでにFIFA内にはTPOについて検討するワーキンググループが設けられており、14年9月から具体的な方策が練られている。遠からず、具体的なロードマップが示される運びとなるだろう。
 
文:片野道郎
 
(ワールドサッカーダイジェスト2014.11.6号より)
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