【欧州サッカー時事解説】「第三者による選手保有の禁止」

カテゴリ:特集

片野道郎

2015年02月10日

UEFAは2年前から対立姿勢をはっきりと打ち出す。

スポルティングの意向を無視してロホをマンチェスター・Uに移籍させたドイエンスポーツの強引なやり方は物議を醸す。 (C) Getty Images

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 FIFAがTPOに対して明確な姿勢を示したのは今回が初めてだが、UEFAはジャンニ・インファンティーノ事務局長が、
 
「原則的に認めるべきではない。第三者保有の選手にUEFAのコンペティションの登録資格を与えない処分も検討している」
 
 とコメントするなど、すでに2年前から対立姿勢をはっきりと打ち出してきた。その理由として挙げられたのは、以下の4点だ。
 
1)投資ファンドの介入によってクラブ経営と戦力強化の自主独立が失われる。
 
2)選手から去就に関する意思決定権が奪われる。
 
3)投資ファンドが売り手、買い手の双方にかかわる場合、移籍市場の公正な競争が損なわれる。
 
4)移籍によって生じた利益がサッカー界の内部で再投資されることなく外部(投資ファンド)に吸い上げられるため、長期的にはサッカー界が痩せ細っていくことになる。
 
 実際、移籍市場ではこの1~2年、ここで挙げられたような問題が現実に起こっている。
 
 記憶に新しいのは、アルゼンチン代表DFマルコス・ロホのマンチェスター・ユナイテッドへの移籍を巡る、スポルティング・リスボンとドイエンスポーツのトラブル。イタリアのスポーツ紙『ガゼッタ・デッロ・スポルト』に掲載されたスポルティングのブルーノ・デ・カルバリョ会長のインタビューによれば、事情は次のようなものだ。
 
 スポルティングは7月23日、夏の移籍マーケットではロホを売却しない方針を決め、保有権の75パーセントを持っていたドイエンスポーツに対してもその旨を通知した。しかしドイエンスポーツのネリオ・ルーカス会長はそれを不服として、複数のメガクラブにロホを売り込んで回り、自らをスポルティングの幹部と偽ってマンチェスター・Uと会談することまでした。
 
 そして、スポルティングがクラブに文書で届いた正式オファーを拒否して移籍に同意しない姿勢を見せると、「移籍を認めなければクラブに問題を引き起こす」などと脅迫。最終的にマンチェンスター・Uへの移籍を受け入れざるをえない状況を作り出した。
 
 これは、第三者がクラブの経営に介入するのを禁じるFIFAの規定に明らかに反するものだ――。
 
 スポルティングは、これを理由としてドイエンとの契約が無効であると主張し、マンチェスター・Uから受け取った移籍金2000万ユーロの75パーセントをドイエンに支払うことを拒否している。このロホを巡る一件は前記の1)に該当する事例だ。
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