SBは、代表を進化させる触媒になり得るだろう。
では逆に、解決していかなければならない課題とはなにか。
これもまた、日本人選手の特長に関係している。戦術的にプレーしようとする意識が高い代わりに、細かな指示を必要とするのだ。この傾向は守備でとりわけ顕著となる。いつプレスを掛けに行くのか、そしてマークの受け渡しを、どのタイミングでするのか。日本人選手は指示が具体的で、細かければ細かいほど力を発揮する。
だが残念なことに、ブンデスリーガのドイツ人監督は、チーム全体に指示を出すことはあっても、ディテールにまでこだわった説明を一人ひとりにしない傾向がある。
そのため、例えばCBとSBの間のスペースにボールが出された時などは、対応に戸惑ってしまうケースが出てくる。タッチライン沿いからクロスを上げられた場面も同様だ。SBはファーポスト側に流れてきたCFをケアしなければならないが、監督の指示が漠然としていて守備陣の連係が取れていないと、問題が出てくる。
むろん根本的な原因は、ドイツ人監督の傾向にあるし、日本人SBが本質的な欠陥を抱えているわけではない。だが選手としてさらにステップアップするために、語学のスキルを高めて、チームメイトと密に連係を取れるようにしていく作業は重要だと思う。
サッカー選手が成功を収めていくために最も重要になるのは、常に努力し続けていくことだ。私はこのテーマについて長谷部とも話し合ったことがあるが、長期に渡ってコンスタントに結果を出していくためには、1日24時間、ひたすらサッカー漬けの毎日を送り続けていく必要がある。
そのうえで、絶えず他人から学んでいく。国によってサッカーのスタイルは千差万別だし、選手は自分と同じポジションのライバルから、常に吸収できる。Jリーグの右SBは内田を参考にしているかもしれないが、当の本人は、ラームのような選手を研究しているはずだ。欧州の日本人SBが今日手にしている成功は、この種の地道な努力の上に成り立っている。
日本人SBは、欧州における日本人選手の評価基準自体を変えたし、戦術やテクニックの面で、サッカー界の進化を反映するまでになった。その意味では、次の段階にステップアップしたと言ってもいい。
もちろん、上に行けば行くほど、選手に求められる条件は厳しくなっていく。
だが彼らが、日本サッカーの新たな地平(フロンティア)や可能性を示唆しているのは間違いない。SBは、日本代表を進化させていく触媒にもなるはずだ。
■プロフィール
ピエール・リトバルスキー/1960年4月16日生まれ、ドイツ出身。選手として3度ワールドカップに出場(優勝1回、準優勝2回)。93年から市原(現千葉)など日本でもプレー。引退後は日本、ドイツ、オーストラリアなどで指揮官を務め、現在はスカウトとして日本サッカーの動きを見守っている。愛称はリティ。
取材・文:田邊雅之(サッカーライター)
これもまた、日本人選手の特長に関係している。戦術的にプレーしようとする意識が高い代わりに、細かな指示を必要とするのだ。この傾向は守備でとりわけ顕著となる。いつプレスを掛けに行くのか、そしてマークの受け渡しを、どのタイミングでするのか。日本人選手は指示が具体的で、細かければ細かいほど力を発揮する。
だが残念なことに、ブンデスリーガのドイツ人監督は、チーム全体に指示を出すことはあっても、ディテールにまでこだわった説明を一人ひとりにしない傾向がある。
そのため、例えばCBとSBの間のスペースにボールが出された時などは、対応に戸惑ってしまうケースが出てくる。タッチライン沿いからクロスを上げられた場面も同様だ。SBはファーポスト側に流れてきたCFをケアしなければならないが、監督の指示が漠然としていて守備陣の連係が取れていないと、問題が出てくる。
むろん根本的な原因は、ドイツ人監督の傾向にあるし、日本人SBが本質的な欠陥を抱えているわけではない。だが選手としてさらにステップアップするために、語学のスキルを高めて、チームメイトと密に連係を取れるようにしていく作業は重要だと思う。
サッカー選手が成功を収めていくために最も重要になるのは、常に努力し続けていくことだ。私はこのテーマについて長谷部とも話し合ったことがあるが、長期に渡ってコンスタントに結果を出していくためには、1日24時間、ひたすらサッカー漬けの毎日を送り続けていく必要がある。
そのうえで、絶えず他人から学んでいく。国によってサッカーのスタイルは千差万別だし、選手は自分と同じポジションのライバルから、常に吸収できる。Jリーグの右SBは内田を参考にしているかもしれないが、当の本人は、ラームのような選手を研究しているはずだ。欧州の日本人SBが今日手にしている成功は、この種の地道な努力の上に成り立っている。
日本人SBは、欧州における日本人選手の評価基準自体を変えたし、戦術やテクニックの面で、サッカー界の進化を反映するまでになった。その意味では、次の段階にステップアップしたと言ってもいい。
もちろん、上に行けば行くほど、選手に求められる条件は厳しくなっていく。
だが彼らが、日本サッカーの新たな地平(フロンティア)や可能性を示唆しているのは間違いない。SBは、日本代表を進化させていく触媒にもなるはずだ。
■プロフィール
ピエール・リトバルスキー/1960年4月16日生まれ、ドイツ出身。選手として3度ワールドカップに出場(優勝1回、準優勝2回)。93年から市原(現千葉)など日本でもプレー。引退後は日本、ドイツ、オーストラリアなどで指揮官を務め、現在はスカウトとして日本サッカーの動きを見守っている。愛称はリティ。
取材・文:田邊雅之(サッカーライター)