「『運動量が肝かな』と考えていたが、そこまで動かなくていい」
――代表ではアンカー、クラブでは不動のCB。両立は難しいですか?
「代表とクラブは別物として捉えています。アンカーとCBで見えている風景はだいぶ異なりますからね。1列違うだけで、後ろに味方のフィールドプレーヤーがいる、いないだけで、危機感もかなり変わります。だから、代表を意識しすぎるとマイナスに働く可能性がある。つまり、アンカーの感覚でCBをやってしまえば下手なプレーを連発する恐れがあるということです」
――ポジションによって、気持ちの持ち方も重要というわけですね。
「アンカー起用は『9月の2試合だけだろう』と勝手に思っているので、代表からFC東京に戻ってきた時に再確認しました。『自分はCBだ』、と。決して『アンカーが嫌』という意味ではありません。アンカーとCBの両方をごちゃ混ぜにして考えるのがダメということを、言いたいだけです。アンカーはちょっとやってみたかったポジションなので、そこで試してくれたアギーレ監督にはむしろお礼を言いたいくらいです(笑)」
――ウルグアイ戦のミックスゾーンでは「楽しめた」とコメントしていましたね。
「組み立ての局面でたくさんプレーに関与できて、確かに楽しかった部分はありました。でも、日本代表のアンカーとしてはまだまだでしたが……」
――アンカーの理想像、手本とする選手はいますか?
「先ほど言ったように、アンカーに意識を奪われるとクラブでのプレーがブレそうなので、そういうのは作りません。アンカーに固定されるか分からない現状では、なんとも言い切れない部分があるというのが正直な感想です。9月の代表合宿ではCBに入る時もあったので」
――確かに、CBで起用される可能性も十分にありますからね。
「まずは代表に選ばれたいという気持ちがありますし、仮に選ばれたらどこで使われるのかなと。次もアンカーで起用されたら『自分はアンカーとして考えられている』と思うかもしれませんね」
――ポジションはやはり、はっきりさせたいですか?
「こだわりは特にありません。ただ、心の準備というか……。代表でアンカーに固定されるなら、少し考え方を変える必要があります。変えるというより、アンカーの知識を増やすと言ったほうが正しいかもしれません」
――最後に、森重選手が考える「アンカーに必要な3大資質」を教えてもらえませんか? 代表戦でプレーした当人だからこそ分かる感覚があるはずなので。
「やる前は『運動量が肝かな』と考えていましたが、実際はそこまで動かなくていい印象です。もちろん、CB以上のそれは求められますよ。ただ、あっちこっちに忙しく顔を出すというよりは、真ん中のエリア付近にいたほうがチーム全体のバランスを保てると感じました。運動量以上に重要なのは、ボールを素早く動かす技術、ボールをきっちりと奪う守備力。そしてなにより、ゲームの流れを読む力ですかね。ピッチ上の監督みたいな役割でしょうか。少し押され気味だからインサイドハーフも下げて守備を固めようとか、向こうが引いて構えるなら全体を押し上げてできるだけ前で奪いに行こうとか、今はあえて引いて様子を見たほうがいいんじゃないかとか、“先”を見抜くセンスが不可欠です」
――文字どおり中心となって、チーム全体を動かす役割が、アンカーには求められているというわけですね。
「サイドラインの深い位置でボールを奪ったとして、そこからひとりでゴールを奪える日本人選手はいません。だから、コンパクトな陣形を保ちながら組織的なディフェンスでボールを奪って、相手の陣形が整わないうちに速攻を繰り出したい。アギーレ監督のサッカーはとりわけボールを奪った後にスピードが求められるので、先の展開を読めるかはやはり重要です。効果的な攻撃を仕掛けられるかは、ある意味、アンカーの舵取りにかかっているかもしれません」
取材・文:白鳥和洋(週刊サッカーダイジェスト)
■プロフィール■
もりしげ・まさと/ 1987年5月21日生まれ、広島県出身。183センチ・76キロ。高陽FC-広島Jrユース-広島皆実高-大分-FC東京。J1通算194試合・12得点。J2通算37試合・6得点。日本代表通算13試合・1得点(9月28日現在)。北京五輪代表のメンバーで、足技にも優れたCB。フル代表デビューした東アジアカップの中国戦からザッケローニ監督の信頼を掴み、14年3月のニュージーランド戦で代表初得点。ブラジル・ワールドカップを戦い、アギーレ政権で臨んだ9月の代表2連戦では、いずれもアンカーで先発出場した。
※『週刊サッカーダイジェスト』10月14日号(9月30日発売)より
「代表とクラブは別物として捉えています。アンカーとCBで見えている風景はだいぶ異なりますからね。1列違うだけで、後ろに味方のフィールドプレーヤーがいる、いないだけで、危機感もかなり変わります。だから、代表を意識しすぎるとマイナスに働く可能性がある。つまり、アンカーの感覚でCBをやってしまえば下手なプレーを連発する恐れがあるということです」
――ポジションによって、気持ちの持ち方も重要というわけですね。
「アンカー起用は『9月の2試合だけだろう』と勝手に思っているので、代表からFC東京に戻ってきた時に再確認しました。『自分はCBだ』、と。決して『アンカーが嫌』という意味ではありません。アンカーとCBの両方をごちゃ混ぜにして考えるのがダメということを、言いたいだけです。アンカーはちょっとやってみたかったポジションなので、そこで試してくれたアギーレ監督にはむしろお礼を言いたいくらいです(笑)」
――ウルグアイ戦のミックスゾーンでは「楽しめた」とコメントしていましたね。
「組み立ての局面でたくさんプレーに関与できて、確かに楽しかった部分はありました。でも、日本代表のアンカーとしてはまだまだでしたが……」
――アンカーの理想像、手本とする選手はいますか?
「先ほど言ったように、アンカーに意識を奪われるとクラブでのプレーがブレそうなので、そういうのは作りません。アンカーに固定されるか分からない現状では、なんとも言い切れない部分があるというのが正直な感想です。9月の代表合宿ではCBに入る時もあったので」
――確かに、CBで起用される可能性も十分にありますからね。
「まずは代表に選ばれたいという気持ちがありますし、仮に選ばれたらどこで使われるのかなと。次もアンカーで起用されたら『自分はアンカーとして考えられている』と思うかもしれませんね」
――ポジションはやはり、はっきりさせたいですか?
「こだわりは特にありません。ただ、心の準備というか……。代表でアンカーに固定されるなら、少し考え方を変える必要があります。変えるというより、アンカーの知識を増やすと言ったほうが正しいかもしれません」
――最後に、森重選手が考える「アンカーに必要な3大資質」を教えてもらえませんか? 代表戦でプレーした当人だからこそ分かる感覚があるはずなので。
「やる前は『運動量が肝かな』と考えていましたが、実際はそこまで動かなくていい印象です。もちろん、CB以上のそれは求められますよ。ただ、あっちこっちに忙しく顔を出すというよりは、真ん中のエリア付近にいたほうがチーム全体のバランスを保てると感じました。運動量以上に重要なのは、ボールを素早く動かす技術、ボールをきっちりと奪う守備力。そしてなにより、ゲームの流れを読む力ですかね。ピッチ上の監督みたいな役割でしょうか。少し押され気味だからインサイドハーフも下げて守備を固めようとか、向こうが引いて構えるなら全体を押し上げてできるだけ前で奪いに行こうとか、今はあえて引いて様子を見たほうがいいんじゃないかとか、“先”を見抜くセンスが不可欠です」
――文字どおり中心となって、チーム全体を動かす役割が、アンカーには求められているというわけですね。
「サイドラインの深い位置でボールを奪ったとして、そこからひとりでゴールを奪える日本人選手はいません。だから、コンパクトな陣形を保ちながら組織的なディフェンスでボールを奪って、相手の陣形が整わないうちに速攻を繰り出したい。アギーレ監督のサッカーはとりわけボールを奪った後にスピードが求められるので、先の展開を読めるかはやはり重要です。効果的な攻撃を仕掛けられるかは、ある意味、アンカーの舵取りにかかっているかもしれません」
取材・文:白鳥和洋(週刊サッカーダイジェスト)
■プロフィール■
もりしげ・まさと/ 1987年5月21日生まれ、広島県出身。183センチ・76キロ。高陽FC-広島Jrユース-広島皆実高-大分-FC東京。J1通算194試合・12得点。J2通算37試合・6得点。日本代表通算13試合・1得点(9月28日現在)。北京五輪代表のメンバーで、足技にも優れたCB。フル代表デビューした東アジアカップの中国戦からザッケローニ監督の信頼を掴み、14年3月のニュージーランド戦で代表初得点。ブラジル・ワールドカップを戦い、アギーレ政権で臨んだ9月の代表2連戦では、いずれもアンカーで先発出場した。
※『週刊サッカーダイジェスト』10月14日号(9月30日発売)より