「シュートを外している時期はチャンスが来るのが怖かった」
――クラブと代表の活動を両立させるには、身体の他に心のメンテナンスも不可欠です。
「仰るとおりです。正直、身体は相当きついですね」
――当然だと思います。自身初の代表活動で、尋常ではないプレッシャーにさらされていたわけですから。ただ、勝負はむしろこれからです。マークが厳しくなる今後のJリーグで結果を残してこそ、真の代表戦士です。
「そうですね。目の前の試合に必ず勝って、FC東京をリーグ優勝させたい。そういう意味で、気持ちには張りがあります。質問の答とは少しズレますが、代表入りを狙ってというよりは、FC東京を勝利に導きたい気持ちのほうが強いですね。その気持ちが前面に出たプレーを評価してもらえて、代表に選ばれたというのが自分なりの見解です。だから、浦和戦(21節/8月23日)でアギーレ監督が視察に来ているから頑張ったと報じられるのは、少し違うかなと。代表監督をまるで意識しなかったと言ったら嘘になりますが、浦和戦であれだけ良いプレーができたのは『FC東京を勝利に導きたい』という気持ちがあったからです」
――浦和戦に限らず中断明け以降はシュートへのアプローチが素晴らしいです。中断前はGKの正面に入ってシュートコースを自ら消してしまうシーンが多くありましたが、上手
く修正しましたね。
「技術ではなくメンタル的な問題だと解釈しています。シュートは大学時代からかなりこだわって練習してきたので、苦手ではありません。リーグ前半戦でゴールに見放されたのは、『なぜ入らないのだろう』と悩んでしまったからだと思います。でも、Jリーグの中断期間中にリフレッシュできて、(16節の新潟戦で)1点取れてからは良い波に乗れました」
――印象的だったのは、清水戦での58分のゴール。二度の切り返しから叩き込んだ一撃は、武藤選手も「イメージどおり」と言っていましたね。
「そうですね。あのゴールも吹っ切れるきっかけになりました。シュートの技術が少しは磨かれたかもしれませんが、それよりはやはり精神的に強くなった。正直、シュートを外している時期はチャンスが来るのが怖かった。『来なくていい。なんで僕のところにボールが来ちゃうんだよ』と気持ち的に逃げていました。でも、今は違います。『来てラッキー。ここで決めてやろう』と。その変化は大きいです」
――22節の鹿島戦でも、上手い具合にボールが転がってきました。
「あの同点弾はもう引き寄せました(笑)。『来い! 来い!』と念じていたら本当にこぼれて来ました」
――4-3-3から4-3-1-2に変更したシーズン後半は2トップの一角に固定されています。3トップの左サイドと比べてどうですか?
「2トップを任されるようになって、ゴールへの執着心は高まりました。DFとの駆け引き、裏に抜け出すタイミングなどを考え、いろんなプレーにチャレンジするようになって成長できた部分はあります」
――とりわけ、どんな動きを意識しながらプレーしていますか?
「呼び込む動きですね、2トップになった当初は。今は、どうしたらフリーになれるかを考えながらプレーしています」
――フィッカデンティ監督は「武藤はまだまだ成長できる」と言っていました。
「良い監督と出会えたと思います。自分の足りない部分を指摘してくれるだけでなく、改善策も教えてくれますから。プレーがブレなくなってきたのも、マッシモ監督の指導があったからでしょう」
――監督にはどんなアドバイスを?
「例えば、シュートは低く隅を突く。上や中途半端な高さだとDFもGKも止めやすい。その点、低くて速い弾道のシュートならDFの股を抜けるし、GKもこぼしやすいとアドバイスされました。自分が少しメンタル的に疲れている時も、かなりサポートしてくれます。こうしてメディアに取り上げられた時も、『常に謙虚でいなさい』と言葉をかけてくれますからね。感謝しています」
――次のステージへ向かううえで、なにより大切なものは?
「謙虚な姿勢です。昔から両親にも言われていますが、自分が凄い人間だと勘違いしてしまった瞬間に成長は止まってしまいます。そうならないよう、今のスタンスを見失わずに頑張りたいです」
取材・文:白鳥和洋(週刊サッカーダイジェスト)
※週刊サッカーダイジェスト9.30号(9月17日発売号)より
【プロフィール】
むとう・よしのり/1992年7月15日生まれ、東京都出身。178センチ・72キロ。バディSC-FC東京U-15深川-FC東京U-18-慶應大-FC東京。J1通算25試合・9得点。今季24試合・9得点。日本代表2試合・1得点(9月24日現在)。
大学3年で慶應義塾体育会ソッカー部を退部し、在学したままプロ契約。ルーキーながらも、天性のスピードと確かな基本技術に裏打ちされたテクニックは一級品。9月5日のウルグアイ戦でA代表デビュー。9月9日のベネズエラ戦では、力強いドリブル突破から嬉しい代表初ゴールを決めた。
「仰るとおりです。正直、身体は相当きついですね」
――当然だと思います。自身初の代表活動で、尋常ではないプレッシャーにさらされていたわけですから。ただ、勝負はむしろこれからです。マークが厳しくなる今後のJリーグで結果を残してこそ、真の代表戦士です。
「そうですね。目の前の試合に必ず勝って、FC東京をリーグ優勝させたい。そういう意味で、気持ちには張りがあります。質問の答とは少しズレますが、代表入りを狙ってというよりは、FC東京を勝利に導きたい気持ちのほうが強いですね。その気持ちが前面に出たプレーを評価してもらえて、代表に選ばれたというのが自分なりの見解です。だから、浦和戦(21節/8月23日)でアギーレ監督が視察に来ているから頑張ったと報じられるのは、少し違うかなと。代表監督をまるで意識しなかったと言ったら嘘になりますが、浦和戦であれだけ良いプレーができたのは『FC東京を勝利に導きたい』という気持ちがあったからです」
――浦和戦に限らず中断明け以降はシュートへのアプローチが素晴らしいです。中断前はGKの正面に入ってシュートコースを自ら消してしまうシーンが多くありましたが、上手
く修正しましたね。
「技術ではなくメンタル的な問題だと解釈しています。シュートは大学時代からかなりこだわって練習してきたので、苦手ではありません。リーグ前半戦でゴールに見放されたのは、『なぜ入らないのだろう』と悩んでしまったからだと思います。でも、Jリーグの中断期間中にリフレッシュできて、(16節の新潟戦で)1点取れてからは良い波に乗れました」
――印象的だったのは、清水戦での58分のゴール。二度の切り返しから叩き込んだ一撃は、武藤選手も「イメージどおり」と言っていましたね。
「そうですね。あのゴールも吹っ切れるきっかけになりました。シュートの技術が少しは磨かれたかもしれませんが、それよりはやはり精神的に強くなった。正直、シュートを外している時期はチャンスが来るのが怖かった。『来なくていい。なんで僕のところにボールが来ちゃうんだよ』と気持ち的に逃げていました。でも、今は違います。『来てラッキー。ここで決めてやろう』と。その変化は大きいです」
――22節の鹿島戦でも、上手い具合にボールが転がってきました。
「あの同点弾はもう引き寄せました(笑)。『来い! 来い!』と念じていたら本当にこぼれて来ました」
――4-3-3から4-3-1-2に変更したシーズン後半は2トップの一角に固定されています。3トップの左サイドと比べてどうですか?
「2トップを任されるようになって、ゴールへの執着心は高まりました。DFとの駆け引き、裏に抜け出すタイミングなどを考え、いろんなプレーにチャレンジするようになって成長できた部分はあります」
――とりわけ、どんな動きを意識しながらプレーしていますか?
「呼び込む動きですね、2トップになった当初は。今は、どうしたらフリーになれるかを考えながらプレーしています」
――フィッカデンティ監督は「武藤はまだまだ成長できる」と言っていました。
「良い監督と出会えたと思います。自分の足りない部分を指摘してくれるだけでなく、改善策も教えてくれますから。プレーがブレなくなってきたのも、マッシモ監督の指導があったからでしょう」
――監督にはどんなアドバイスを?
「例えば、シュートは低く隅を突く。上や中途半端な高さだとDFもGKも止めやすい。その点、低くて速い弾道のシュートならDFの股を抜けるし、GKもこぼしやすいとアドバイスされました。自分が少しメンタル的に疲れている時も、かなりサポートしてくれます。こうしてメディアに取り上げられた時も、『常に謙虚でいなさい』と言葉をかけてくれますからね。感謝しています」
――次のステージへ向かううえで、なにより大切なものは?
「謙虚な姿勢です。昔から両親にも言われていますが、自分が凄い人間だと勘違いしてしまった瞬間に成長は止まってしまいます。そうならないよう、今のスタンスを見失わずに頑張りたいです」
取材・文:白鳥和洋(週刊サッカーダイジェスト)
※週刊サッカーダイジェスト9.30号(9月17日発売号)より
【プロフィール】
むとう・よしのり/1992年7月15日生まれ、東京都出身。178センチ・72キロ。バディSC-FC東京U-15深川-FC東京U-18-慶應大-FC東京。J1通算25試合・9得点。今季24試合・9得点。日本代表2試合・1得点(9月24日現在)。
大学3年で慶應義塾体育会ソッカー部を退部し、在学したままプロ契約。ルーキーながらも、天性のスピードと確かな基本技術に裏打ちされたテクニックは一級品。9月5日のウルグアイ戦でA代表デビュー。9月9日のベネズエラ戦では、力強いドリブル突破から嬉しい代表初ゴールを決めた。