町田の広報として奮闘する日々が始まってから、約７年の歳月が過ぎた。この間、クラブはJ２からの降格、J２復帰、そしてJ２定着と、紆余曲折を経て、今年はJ２復帰３年目のシーズンを戦っている。クラブが描く近未来のビジョンは、2020年の東京五輪イヤーをJ１で戦うこと。近未来のビジョン実現に向けて、近藤氏は広報の立場からクラブの発展につながる仕事を続けているが、その業務は実に多岐に渡る。
 
　１週間のうちの大半は、トップチームのトレーニングや公式戦に同行し、メディアとの折衝やクラブの公式ホームページを通じて、クラブの情報発信を促す。その一方で社内では各部署と連携しながら、他部署の活動の効果を上げるための広報戦略も練っている。各SNSでの発信はもちろんのこと、街中で掲出されている宣伝ポスターやスポンサー企業である小田急線車内の中吊り広告なども、近藤氏を中心とした広報課が制作している。
 
　日々のトレーニング場ではファン・サポーターと積極的にコミュニケーションを図るなど、クラブとサポーターの距離感を縮める努力も欠かしていない。ファンサービスの際には、選手とファンの交流を手助けすることもあるため、その感謝の印として、近藤氏の似顔絵が描かれたゲーフラがゴール裏に登場したこともある。
 
「広報は裏方に徹しなければならない」
　そう頭では分かってはいるものの、実際に自分のゲーフラを目にした時は、自分の仕事が認められた気がした。
 
　2018年は自身にとって、節目となる40歳の年。まだ20年以上は続くであろうクラブスタッフの“現役”として、近藤氏はこの先にどんな未来を思い描いているのだろうか。
 

「ゼルビアを地域の人に愛されるクラブにしたいですね。その思いに尽きます。町田市民全員が最低年に一回は必ずゼルビアの試合を見に来る、いつもスタジアムがいっぱいになっている、そうなったらうれしいですね。極論かもしれませんが、広報の仕事がいらなくなるくらい、ゼルビアが町田のみなさんの話題の中心になり、みんなに愛されるクラブになってくれたらいいなと思っています。ゼルビアを、この町田で本当の意味で、当たり前のような存在にしていきたいんです」

　ヨーロッパでは、サッカークラブが地域の中心にあるのは、語る必要がないほど、当たり前の事実だ。近藤氏は、大学時代、オランダのアムステルダムを訪れ、アヤックスの試合を観戦している。そこで目の辺りにした、サッカーがある当たり前の生活。サッカーどころと言われる町田も、そんな街にしたい――。

　憧れの仕事に就いたというだけは、夢は終わらない。近藤氏の視線は、町田を日本一のサッカーの街にするという次の夢に向けられている。
 
取材・文●郡司 聡（フリーライター）