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【ロシアW杯総括】ひと言で言えばドラマチック。日本は最高のエンターテインメントを提供した

カテゴリ:日本代表

白鳥和洋(サッカーダイジェスト)

2018年07月04日

金髪のおっさんこそ、今大会のMVPだ

長友の言動には心を打たれるものだった。写真:JMPA代表撮影(滝川敏之)

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 迎えた決勝トーナメントの1回戦。相手は優勝候補のベルギーだった。セネガル戦と同じスタメンで臨んだ日本は前半途中から防戦一方で、苦しい展開を余儀なくされた。原口元気が「しんどかった」と言うように、赤い悪魔のビッグウェーブに呑み込まれそうなシーンは多々あった。
 
 それでも吉田を中心とする守備陣の踏ん張りもあり、どうにか前半を0-0で終える。相手に余裕を与えなかったという意味で、日本は理想に近い試合運びをした。
 
 サッカーにおいてこうした流れは重要で、実際、2点を先行したのは日本だった。48分に柴崎のスルーパスから原口が右足で先制弾を突き刺すと、その4分後には乾が会心のミドルを突き刺す。ラッキーボーイ乾の追加点で、長友も「一瞬夢を見た」。
 
 だが、日本はそのリードを守り切れなった。悔やまれるのは69分の失点だろう。取られ方はどうあれ、これまで味方につけてきた運を、この時ばかりはベルギーにもっていかれた印象がある。ヤン・ヴェルトンゲンのあのふわりとしたヘディングシュートが入ってしまった事自体は不運としかいいようがない。
 
 あとから映像を見て、あれがいけない、これがダメだ、とは言えるが、現場で、リアルに見ていた感想を述べさせてもらうなら、「あれ、入ってしまったな」である。
 
 いずれにしても、あの1点で逆に日本は追い詰められてしまった。2-0から2-1になり、長友は恐怖を感じていた。
 
「正直、1点取られて向こうが勢いづいたと思いますね。明らかに向こうが目を覚ましたというか、勢いがまったく違ってきたし。途中で出てきた選手、フェライニと22番の選手は相当なフィジカルとスピードがあって。セットプレーもめちゃくちゃ怖かったし。やっぱり相手を勢いづけてしまったかなと思います」
 
 この1点で流れは変わり、日本は74分にマルアン・フェライニにヘッドを叩き込まれると、後半のアディショナルタイムにカウンターから逆転弾を浴びる。

 日本の試合運びが拙かったのは事実だ。2-1となった時点で守備固めという選択肢もあったが、西野監督はそうしなかった。それはそれでネガティブに映らなかった。「できれば攻撃的に行きたい」と就任会見の時に明言したが、オフェンシブな姿勢を貫いことはもしかすると本能的な判断だったのかもしれない。
 
 さすがに山口の動きは重たかったとはいえ、本田は決定機にふたつ絡んでいる。その1本でも決まっていたら日本は勝っていただろう。だが、プレーの精度、スタミナはベルギーのほうが圧倒的に上だった。後半のアディショナルにあのカウンターである。前半からボディブローのようにベルギーの攻撃を受けてきた日本にとって、あれは防ぎようがなかったのではないか。
 
 冷静に振り返ってほしい。試合途中で原口の足がつってしまうほど日本は消耗していたのである。前半の早い時間帯の話ではなくて、ラストプレーであの迫力、あのスピードで攻め込まれたらひとたまりもない。
 
 結局のところ、力負けだったのだ。スコアは1点差だが、そこには大きな差があった。
 
 コロンビア戦の立ち上がりも劇的なら、ベルギー戦での散り方もドラマチック。今大会の日本は最高のエンタ―テインメントを提供した。あのレッドカードからのPK、セネガル戦での信じ難い粘り強さ、ポーランド戦でのまさかの時間稼ぎ、ベルギー戦の目まぐるしい展開、そういうものがいっぺんに味わえるなんて、大会前には想像すらしていなかった。
 
 もちろん11対11の試合では勝っていなくて、ネガティブな側面もある。パスを繋ぐスタイルが通じたかと言えば判断は難しいところである。好勝負はできたが、そこまでという印象もある。そのスタイル云々よりも、今大会に限ればやはりコロンビア戦の勝点3が大きかったように感じる。あそこで勢いに乗れたからこそのベスト16だった、と。

 いずれにしても、今大会を通して見れば日本はアジア勢の誇りを示した。忘れてはならないのが、ヴァイッド・ハリルホジッチ監督の下で培った球際の強さ、対応力、相手ありきの戦い方ができていたという点だ。
 
 ベスト8には届かなかったが、監督、選手は胸を張って帰国してもらいたい。もちろん、ハリルさんだって胸を張るべきだ。
 
 特に、長友。ゼーフェルト合宿からの魂溢れる言動、プレーでチームを引っ張ってきた金髪のおっさんこそ、今大会における日本のMVPだ。
 
取材・文:白鳥和洋(サッカーダイジェスト編集部)

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