30年前に選手権を沸かせた男――三渡洲アデミールの新たな挑戦

カテゴリ:Jリーグ

粕川哲男

2017年07月21日

カゼミーロ、オスカールを指導し、ドゥンガとは直接電話できる仲。

株式会社イカイサッカー部のテクニカルディレクターを務めているが、現在サッカー部は休部状態だ。

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「もう2度とサッカーには関わらない。そう思ったんです」
 
 97年、清水市内にオープンしたレストラン「バナナシュート」は、繁盛した。腕のいい料理人を雇い、自身が深夜まで勉強して身につけた豊富なカクテルや丁寧な接客が話題を呼んだ。
 
 先輩のラモス瑠偉、後輩の三都主アレサンドロなど、多くの仲間が訪れてくれた。一家の長として、愛する妻とふたりの子どもを食べさせるために、寝る間も惜しんで働いた。借金した開業資金は3年で返済できたという。
 
 それでも5年、6年と歳月が経つと、サッカーのことばかり考えている自分に気づいた。消し去ったはずの記憶、ピッチで感じた喜びや充実感が甦ってきた。もう一度あの舞台に立ちたい――。その思いを封じることはできなかった。
 
 2006年、店を畳んでサッカーの現場に復帰した。現在の肩書きは、静岡県沼津市にある製造業、株式会社イカイサッカー部のテクニカルディレクター。名刺には監督・コーチの文字も記されている。
 
 とはいえ、現在サッカー部は休部状態。実質フリーの立場にある。信頼できる伊海剛志社長は「いい話が来て、あなたが幸せになれるなら、それでいい」と言ってくれている。本人は「華やかなパラダイスは望んでいない。監督でもコーチでも、フロントでもスカウトでもいい。サッカーに関われる現場があればトライしたい」と語り、オファーを待つ。やっぱり、自分にはサッカーしかない。
 
「久しぶりの現場は本当に楽しかった。コックさんがいないと何もできないレストランと違って、サッカーなら自分ひとりで頑張れる。GKコーチがいなくても、フィジカルコーチがいなくても、選手を指導して、チームを作ることができる。大変だけどやり甲斐があるし、それに替わる仕事はない。サッカーが一番だって分かったんです」
 
 強みは多い。プレーヤーとしての経験はもちろん、ブラジルのプロ指導者ライセンス、日本のA級ライセンスも持っている。通訳の要らない流暢な日本語を話し、ブラジルとの強固なネットワークもある。元ブラジル代表監督のドゥンガやマノ・メネゼスとは、直接電話できる仲だ。コーチの勉強をしていたサンパウロでは、カゼミーロ(R・マドリー)、オスカル(上海上港)といった選手たちも指導。どういった選手が世界で成功するのか、その眼にしっかりと焼きついている。
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