【モダンCB論】S・ラモスやピケが頂点に君臨する理由。カンナバーロは現代なら困難も?

カテゴリ:ワールド

片野道郎

2017年06月20日

スピードよりもまず「デカくて強い」ことが重要。

このボヌッチは恵まれた体格に加え、足技とインテリジェンスも成長を見せ、いまやセリエA随一のCBに。(C)Getty Images

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 問題は、身長の高さや体重の重さとスピードは、反比例とは言わないまでも両立が非常に難しい資質だという点にある。190センチ・クラスの身長を持ちながら、トップレベルのFWにも走り負けしないほどのスピードを備えたCBは、世界を見回してもラファエル・ヴァランヌ(レアル・マドリー)、ジェラール・ピケ(バルセロナ)、カリドゥ・クリバリ(ナポリ)、ダビド・ルイス(チェルシー)、コスタス・マノラス(ローマ)など数えるほどしかいない。
 
 しかし、爆発的なスピードの持ち主であれば、体格的には多少のハンディキャップがあっても、それをカバーすることは十分に可能だ。セルヒオ・ラモス(R・マドリー)、チアゴ・シウバ、マルキーニョス(いずれもパリSG)はいずれも183cmとCBとしては小柄な部類に入るが、その圧倒的なスピードで困難な状況をしばしば独力で解決して見せる。
 
 スピードがあるということは、両脚に大きなパワー(筋力)を備えている証拠であり、それは速さだけでなく跳躍力やアジリティーという形でも表現される。したがってスピードがあるCBはほとんどの場合、オープンスペースだけでなくゴール前の狭いスペースにおける空中戦や大柄なCBが苦手とするクイックなアタッカーとの地上戦においても強みを発揮する。
 
 ここに挙げた3つのプレー状況は、チームの戦術、そしてそれ以上に絶対的な戦力レベルによって、出現する頻度とその重要性が異なってくる。
 
 守備陣形を整えた状況におけるゴール前でのデュエルは、相手に押し込まれて守勢に回っていることによって生まれるもの。絶対的な戦力レベルの低いチームの場合、格上相手の対戦が必然的に多くなるため、この状況に直面する頻度もそれだけ高くなる。
 
 こうしたチームにおいて、CBに求められるのは何よりもまず、相手の攻撃を水際ではね返すフィジカル能力の高さだ。スピードよりもまず「デカくて強い」ことが重要になってくる。15-16シーズンのプレミアリーグで奇跡的な優勝を果たしたレスターのCBペア(ロベルト・フートとウェズ・モーガン)は、そのお手本のような存在だろう。
 
 戦力レベルが高くとも、ポゼッションにこだわらずチームの重心を低めに設定して守るチーム、例えばディエゴ・シメオネのアトレティコやモウリーニョのマンチェスター・Uも、スピードの優先順位はそれほど高くない。
 
 逆に、自らがボールを支配し敵陣に相手を押し込めて戦う攻撃的なサッカーを志向するチームには、押し上げた最終ラインの背後に広がる大きなスペースを独力でマネージできる、圧倒的なスピードを備えたCBが不可欠だ。
 
 S・ラモス、ピケ、T・シウバ、マルキーニョス、ヴァランといったワールドクラスのCBと、それに続くボアテング、フンメルス、ボヌッチら二番手グループを分ける最大の違いは、まさにこの絶対的なスピードにある。とはいえ、二番手グループのCBたちにしても、決して遅いわけではなく、CBとしては十分な速さを備えている。
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