なにを持って恵まれた環境と呼べるのかが分からない。厳しい環境を単に美化することは、おそらく青森山田のスタッフや選手も望んでいないだろう。

　それでも青森山田には、徹底してサッカーと、自分自身と向き合える環境があるのは間違いない。だからこそ、柴崎岳、神谷優太、櫛引政敏（岡山）、室谷成（現・ＦＣ東京）、橋本和（現・神戸）……どこかストイックでありながらもチームワークを重視する魅力的なタレントをプロの世界へ送り込んでいる。
 
　今回の優勝メンバーからは、GK廣末がジュニアユースから高校経由で、FC東京のトップチームに加わる。決勝で左足ボレーから先制点を決めた高橋壱晟は千葉への加入が内定している。先に挙げた先輩たちとの共通点は確かにある楽しみな逸材だ。
 
　青森県の向こう一週間の天気予報は雪。サッカーの神様からの全国制覇を祝福する贈り物なのか、さっそく厳しい冬の試練が待ち受けている。テクニックのみならずメンタル面でも圧倒的なタフさを見せつけ、全国の頂点に立った。そして青森山田のまた新たな戦いがスタートする。
 
 取材・文：塚越 始（サッカーダイジェスト編集部）