副将イバノビッチを外して、自分色にチェルシーを染め上げるコンテ。

オーナーと近い関係にあったイバノビッチ(右)をはじめ、自身が不必要と考えるプレーヤーを外したことでチーム内にあった悪い空気を一掃したコンテ(左)。混戦模様の上位戦線を抜け出す準備も整ったか。 (C) Getty Images
昨シーズンにモウリーニョがチームと対立した末、解任に追い込まれた時には、アブラモビッチ・オーナーが監督ではなく選手サイドについたという噂はまことしやかに報じられたものだった。
それと比較すると、今回報じられたクラブの内部状況は正反対。絶対的な権力を持つオーナーが監督の後ろ盾となってその権威にお墨付きを与え、「プレーヤー・パワー」を抑え込んだというシナリオである。
記事を書いたマット・ヒューズは、ザ・タイムズ紙のフットボール担当次席記者(主席は『ワールドサッカーダイジェスト』誌でもおなじみのオリバー・ケイ記者)で、同紙ウェブサイトのプロフィール欄には「イングランド代表番でチェルシーにもコネクションを持つ」とある。
同紙が凡百のタブロイド群とは異なり裏の取れていないガセネタを平気でスクープするようなメディアではないことから考えても、これがクラブの内部から情報リークを得て書かれた信頼できる記事である可能性はきわめて高い。細かいディテールがどこまで事実かはわからないにしても、話の大筋に間違いはないということだ。
実際、コンテが3バックへのシステム変更に踏み切ったのは、まさにこのスクープが流れた直後の週末のことだった。このシステム変更でスタメンから外されたイバノビッチはチームの副主将であり、故障離脱中だった主将テリーと並んでロッカールームで最も大きな発言力を持つとされるプレーヤーで、アブラモビッチ・オーナーとも非常に近い関係にあると言われてきた。
言ってみれば「プレーヤー・パワー」の象徴であるイバノビッチをスタメンから外すという決断が、ザ・タイムズ紙がスクープした監督とオーナーの「3日連続ランチミーティング」に結びついていると考えるのは、いささか深読みに過ぎるかもしれない。
しかし、結果的に、この決断を含む3バックへのシステム変更が、「ピッチ上」におけるチェルシーの豹変と躍進の始まりとなったことは、客観的なひとつの事実である。
4バックで戦っていた時には、チームが組織として機能せず選手がバラバラにプレーしている印象が強かったチェルシーだが、3-4-2-1の新システムに切り替えてからは見違えるようにコレクティブなチームに変身した。
今やコンテはしっかりとロッカールームを掌握し、チェルシーを着々と自分の色に染めつつある。
文:片野道郎
【著者プロフィール】
1962年生まれ、宮城県仙台市出身。1995年からイタリア北部のアレッサンドリアに在住し、翻訳家兼ジャーナリストとして精力的に活動中だ。カルチョを文化として捉え、その営みを巡ってのフィールドワークを継続発展させている。『ワールドサッカーダイジェスト』誌では現役監督とのコラボレーションによる戦術解説や選手分析が好評を博す。
それと比較すると、今回報じられたクラブの内部状況は正反対。絶対的な権力を持つオーナーが監督の後ろ盾となってその権威にお墨付きを与え、「プレーヤー・パワー」を抑え込んだというシナリオである。
記事を書いたマット・ヒューズは、ザ・タイムズ紙のフットボール担当次席記者(主席は『ワールドサッカーダイジェスト』誌でもおなじみのオリバー・ケイ記者)で、同紙ウェブサイトのプロフィール欄には「イングランド代表番でチェルシーにもコネクションを持つ」とある。
同紙が凡百のタブロイド群とは異なり裏の取れていないガセネタを平気でスクープするようなメディアではないことから考えても、これがクラブの内部から情報リークを得て書かれた信頼できる記事である可能性はきわめて高い。細かいディテールがどこまで事実かはわからないにしても、話の大筋に間違いはないということだ。
実際、コンテが3バックへのシステム変更に踏み切ったのは、まさにこのスクープが流れた直後の週末のことだった。このシステム変更でスタメンから外されたイバノビッチはチームの副主将であり、故障離脱中だった主将テリーと並んでロッカールームで最も大きな発言力を持つとされるプレーヤーで、アブラモビッチ・オーナーとも非常に近い関係にあると言われてきた。
言ってみれば「プレーヤー・パワー」の象徴であるイバノビッチをスタメンから外すという決断が、ザ・タイムズ紙がスクープした監督とオーナーの「3日連続ランチミーティング」に結びついていると考えるのは、いささか深読みに過ぎるかもしれない。
しかし、結果的に、この決断を含む3バックへのシステム変更が、「ピッチ上」におけるチェルシーの豹変と躍進の始まりとなったことは、客観的なひとつの事実である。
4バックで戦っていた時には、チームが組織として機能せず選手がバラバラにプレーしている印象が強かったチェルシーだが、3-4-2-1の新システムに切り替えてからは見違えるようにコレクティブなチームに変身した。
今やコンテはしっかりとロッカールームを掌握し、チェルシーを着々と自分の色に染めつつある。
文:片野道郎
【著者プロフィール】
1962年生まれ、宮城県仙台市出身。1995年からイタリア北部のアレッサンドリアに在住し、翻訳家兼ジャーナリストとして精力的に活動中だ。カルチョを文化として捉え、その営みを巡ってのフィールドワークを継続発展させている。『ワールドサッカーダイジェスト』誌では現役監督とのコラボレーションによる戦術解説や選手分析が好評を博す。