• トップ
  • ニュース一覧
  • 英国、福岡、タイ、北九州、そしてベルギーへ…波瀾万丈キャリアを歩んだ日本人がアジア初の“世界最難関プロライセンス”を取得するまで【現地発】

英国、福岡、タイ、北九州、そしてベルギーへ…波瀾万丈キャリアを歩んだ日本人がアジア初の“世界最難関プロライセンス”を取得するまで【現地発】

カテゴリ:海外日本人

中田徹

2025年04月05日

STVVの進化を支える「親や選手の信頼を掴む方法」

独自のメソッドを追求する高野氏。51歳のチャレンジはまだまだ続く。写真:中田徹

画像を見る

 2018年にFAのプロ指導者ライセンスを取得した高野は同年、Jリーグの育成改革プロジェクト『Project DNA』に携わり、21年からSTVVに活躍の場を移した。

 日本のIT企業、DMM.comがSTVVを買収したとき、アカデミー出身の選手はトップチームに数名しかいなかった。しかし高野が育成部長を務めるようになると、一気にアカデミーからトップチームに昇格していく選手が増えた。特に昨季、23-24シーズンはDFマット・スメッツ(現ヘンク/ベルギー代表)、MFメティアス・デロージュ(現ヘント)、FWヤルネ・ステウカース(現ヘンク)といった10人のアカデミー出身選手と、日本人選手が噛み合い、成績は9位と中位だったが艶やかなフットボールでベルギーのサッカーファンを魅了した。

 今季は残念ながらトップチームは残留争いの真っ最中で、成績は振るわないが、そのことを考慮しても6人のアカデミー出身者がメンバー表に名を連ねることがあるのは凄い。特にベルギーカップ準々決勝でヘンクと対戦したときには、両チームメンバー総計40人のうち合計8人ものSTVV育ちの選手でメンバー表が埋まった。

 しかし、ベルギーサッカー界のアカデミーは仁義なき戦いが横行し、ビッグクラブが根こそぎタレントを引っ張っていってしまう。小クラブのSTVVは、どのようにしてタレントをクラブに引き止めているのだろうか。

「思春期の遅い選手やB級クラスのタレントをまったくお金を使わずして確保し続け、着実に育てていくことに関しては、私たちは自信を持っていいと思います。その秘訣は選手、親や代理人との信頼です。13歳、14歳の選手にはもう代理人がいますから、親と媚びることなく面談して、親、選手、代理人から信頼してもらえるよう、持っていくしかないですね」

 親や選手の信頼を掴む方法のひとつが、選手一人ひとりの成長を予測した資料だ。

「マット・スメッツ、マッツ・カウパースやアルトゥール・アレクシスたちには、こうした育成計画をグラフにして見せてやってきて、今はセカンドチームで頑張ってます。すると他の選手が『お前、どうしてこんなに伸びてきたんだ』という話になってロッカールームがざわついて、それが親たちにも伝わり波紋を呼んだ。

 僕が『この選手はこうなります』『この選手をこうしていく予定です』と両親に話したことが1年、2年経って叶うという確実性がある。しかし『トップチームに行けるかどうかはさすがに分かりませんよ。しかしトップチームの扉の手前までは、僕が確実に連れていきます。ただ、本人のやる気が続き、彼が自分の成長に責任をもって行なうことができればという条件が付きます』とは言っております」
 
 具体的なミーティングの模様はこうだ。

「マット・スメッツはサッカーへの姿勢がとても良く、ご両親も落ちついた方たちです。『息子さんはこういう感じでアンダー18、セカンドチームに上がっていくことを考えてます。特にすごい身体能力があるわけではないけれど、危機察知能力がとても良いし、ボールを持っても落ちついていて、良い土台があるから、私としては息子さんにSTVVで関わらせてもらいたい』という風に進めました」
 
 それが現実のものになってロッカールームがざわついたのだ。

「もちろん、これまでに失った逸材もいましたよ。『お金は大事だし』『プロ契約をもらえるし』とか。だけど今季、プロ契約をしてトップチームでベンチ入りし続けている17歳のジェイ・デイビッドは2年前にフランスからオファーが来て、その条件もかなり高額だった。そこで私が『STVVは予算がなくお金を出せないけれど、ここで本気でやったら間違いなく良くなる。そのことを信じられるのなら、残ってほしい』と話したら『高野に任せました』と言ってくれて今がある。彼がトップチームでデビューしたときはお父さんが私のところに抱きついてきました(笑)」

 18歳の青年がアメリカへ渡ったとき、サッカーで生計を建てるようになるとは夢にも思っていなかった。しかし高野の履歴を辿ってみると、サッカーの指導者はまさに彼の天職だったのだろう。「ここから世界へ」がSTVVのスローガン。それは日本人選手だけではなく、51歳の高野も目ざすところである。

<了/文中敬称略>

取材・文●中田 徹

【記事】前編はこちら! 北米で現役を終えた日本人指導者はいかにして、世界を股にかける“育成の敏腕”へと進化を遂げたのか「森保さんと共に徹夜しながら…」【現地発】

【画像】9頭身の超絶ボディ! 韓国チア界が誇る“女神”アン・ジヒョンの魅惑ショットを一挙チェック!

【画像】“世界一美しいフットボーラー”に認定されたクロアチア女子代表FW、マルコビッチの魅惑ショットを一挙お届け!
【関連記事】
北米で現役を終えた日本人指導者はいかにして、世界を股にかける“育成の敏腕”へと進化を遂げたのか「森保さんと共に徹夜しながら…」【現地発】
「日本人ばっかり出して」「弱いじゃないか!」ファンが不満を抱いたSTVVが100周年で挑む“ユース育成改革”の全容~立石敬之CEOに訊く【現地発】
「日本をサッカーの指導者大国にする」オランダで切磋琢磨する“コーチのコーチ”が波瀾万丈キャリアを経て描く壮大なるビジョン【現地発】
「稼げる、収益を考えられる、クラブに還元できる」“小笠原満男・命”だった少女が欧州クラブでバリバリ活躍する敏腕広報に成長を遂げるまで【現地発】
「ゴッドハンドを目ざす!」欧州で独自の治療法を追求する“敏腕フィジオ”のもとに日本代表戦士たちが続々!「メンタルと筋肉は関係します」【現地発】

サッカーダイジェストTV

詳細を見る

 動画をもっと見る

Facebookでコメント

サッカーダイジェストの最新号

  • 週刊サッカーダイジェスト 王国の誇りを胸に
    4月10日発売
    サッカー王国復活へ
    清水エスパルス
    3年ぶりのJ1で異彩を放つ
    オレンジ戦士たちの真髄
    詳細はこちら

  • ワールドサッカーダイジェスト 特別企画
    5月1日発売
    プレミアリーグ
    スター★100人物語
    絆、ルーツ、感動秘話など
    百人百通りのドラマがここに!
    詳細はこちら

  • 高校サッカーダイジェスト 完全保存版
    1月17日発売
    第103回全国高校サッカー選手権
    決戦速報号
    前橋育英が7年ぶりの戴冠
    全47試合&活躍選手を詳報!
    詳細はこちら

>>広告掲載のお問合せ

ページトップへ