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北米で現役を終えた日本人指導者はいかにして、世界を股にかける“育成の敏腕”へと進化を遂げたのか「森保さんと共に徹夜しながら…」【現地発】

カテゴリ:海外日本人

中田徹

2025年04月05日

「キャリアの分岐点に立ったとき、最後は『えい!』という直感です」

広島ではアカデミーの指導のみならず、トップチームのスタッフにも名を連ねた。写真:本人提供

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 帰国直後は東海大五高校Bチームを指導した。ある日、サンフレッチェ広島の強化部長とスカウトが同校を訪れた。

「スカウトの足立修さん(現Jリーグフットボール本部)は私にとって高校の1年先輩なんです。平清孝先生(現岡山学芸館高校ゼネラルアドバイザー)が『彼のこと、分かるか?』と訊いても、足立さんも13年ぶりなので分かるわけがない。『高野です』『おおっ!』となった。そして『こちらは強化部長の織田秀和さん(現ロアッソ熊本強化部長)だ。何か持ってないのか?』と平先生が言ったんですが、常に私は経歴書を持っていたんですよ(笑)。それで平先生が織田さんに『ジュニアユースかユースで、どこかないですかね』と。その経歴書が後々大きかった」

 その後、高野は北から順にJリーグの各クラブを回りながら、面接や練習見学を繰り返す。関西のあるクラブを訪れていた頃、彼の元に足立から「高野、いまお前、何してるんだ? 日当を払うから2週間だけサンフレッチェ広島を手伝ってほしい」と電話がかかってきた。

「ヘッドコーチの影山雅永さん(現JFA技術委員長)がAFCプロライセンスを受講していて2週間いなくなる。そこで人が必要になり、私の経歴書が活きたんです」

 当時の広島は対戦相手の分析を横内昭展(元日本代表コーチ、ジュビロ磐田監督など)と影山が担当していた。高野は影山不在時のサポート役だった。

「当時の小野剛監督はFAのインターナショナルライセンスを受けていたので、私と視点や感覚が合うのではということで、入れていただきました。あと、横内さんは東海大五の大先輩なんです」

 2週間の予定が1か月に伸び、やがてシーズン最後までやり切ることになった。そして翌2005年シーズンから育成部門コーチとして高野は広島に入団することになった。

「広島駅を降りた瞬間の風景・空気をまだ覚えています。直感的に『ここだな』と感じました。当時、Jリーグで最先端のフットボールをするクラブ、強豪クラブからもお話をいただきましたが、広島が光って見えました。今になって思うのは、キャリアの分岐点に立ったとき、プラス・マイナスを考えて頭の中を整理しても、最後は『えい!』という直感です。その直感を突き詰めるまでに、きちんと宿題をしたり考えたりしておかないと後々後悔することになります。ともかく最後は『えい!』。その後のキャリアもそうでした」
 
 08年にはトップチームで分析を担当することになった。

「当時の広島はJ2で、しかもリーグ戦が3回総当たりということで試合数がとても多かったんです。対戦相手の分析をしていた森保一さん(現日本代表監督)がアウェー帯同メンバーから外れた選手たちの練習も見ていた。監督のミシャさん(ミハイロ・ペトロヴィッチ)は『相手チームだけでなく、相手の選手一人ひとりの分析が欲しい』と求めてきたので、森保さんひとりではとても分析が務まらない。アカデミーのなかで私の分析の評判が良かったので、こうして森保さんと一緒にトップチームで分析を担当するようになり、共に徹夜しながら仕事をしました」

 こういうパターンで得点します、こういうパターンで失点します――。その分析が実際の試合で現れることが多く、高野はペトロヴィッチの信頼を掴んだ。チームはJ1復帰を果たした。

「2009年、ここからが大変だったんです。私はまだJ1を見る力がなかったので、毎回同じ分析内容になってしまう。『これはいかんなあ』と自分でも思いつつ改善できない。自分の力不足もあってこのシーズンで契約が終わり、私もごもっともと思いました」

 高野はFAのコーチングライセンスをB級まで持っていたが、A級ライセンスは7回落ちていた。

「イギリスに行こう。これが最後のチャンスだ。これでA級に受からなかったら、自分にコーチの道は向いてない。力がないし、素質もないんだ、と。人生のすべてを懸けてイギリスに引っ越したんです」

 2010年、高野剛、36歳のときだった。

<後編につづく/文中敬称略>

取材・文●中田 徹

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