MUNIR El Haddadi
ムニル・エル・ハッダディ
背番号17/FW/スペイン代表/1995年9月1日生まれ/175センチ・69キロムニル・エル・ハッダディは、いわば“モロッコの奇跡”だ。
父親は20歳で粗末な木船に乗って、モロッコからジブラルタル海峡を越えてスペインに渡ってきた移民。路上で物を売り、スペインに住み続けるために警察から脱走したこともあった。ビルバオのレストランでバスク料理を学び、そこでようやく正式な就労許可を得た。
苦労の末の人生の報償として、ムニルを授かった。エル・ハッダディとは「光をもたらす」という意味だ。生まれはマドリードから約50キロの位置にあるエル・エスコリアル。幼い頃は熱心なレアル・マドリーのファンだった。
地元クラブやアトレティコ・マドリーのイースチームで活躍するムニルに才能を感じた父親は、R・マドリーのスカウトに売り込み、視察の約束をさせた。
しかし、「次は行く」と何度も言い続けながら、待てど暮らせどR・マドリーのスカウトはムニルの試合に足を運ばなかった。
業を煮やした父親は、最終的に息子をバルセロナに移籍させた。マドリーの幹部はバルサ・ユースで活躍しはじめたムニルにそんなエピソードがあったのを知ると、問題のスカウトマンをクビにしたという。
いまやバルサのトップチームの一員となった息子が自分の年俸を1試合で稼ぐようになっても、父親は以前と変わらずシェフとして働き、賃貸マンションで暮らしている。
父親の背中から学んでいる勤勉の大事さが、浮ついたところがまるでないムニルの性格を作り上げているのだ。
文:山本美智子