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【アナリスト戦術記】ブラジル戦で露呈した“個人戦術”の差。遠藤航とカゼミーロでは何が違ったか?

カテゴリ:連載・コラム

杉崎健

2022年06月30日

サッカーはシステムではなく、人が行なうもの

 一方で、もう一点と冒頭で記した、アナリスト的思考を持つ人が増えてきたなかでの違和感とは、こうした個人戦術の話が抜けている時に感じる。

 チーム戦術を見る人は、増えたと思う。システム、配置転換、攻守での使い分け、コンセプト化など。それを紐解こうと必死に見ている人も多くなったのではないか。非常に良いことだと感じるし、昔ではあまりなかった兆候だ。ただ、サッカーとはシステムで行なうわけではなく、人が行なう。

 Aチームが4−4−2で、Bチームが3−4−3だからかみ合わせ的に…といった論調はよく見られるようになったが、個人戦術を深堀りしたなかでの組み合わせの話は、多く見られるわけではない。

 前述のブラジル代表戦も同じだと感じている。ブラジルの選手と日本の選手の個人戦術の差に言及する人はどのくらいいただろうか。単に上手い下手ではない。それは技術であり、戦術ではない。ボールをもらう前のポジション、視野の確保、首を振ったうえでの情報処理、ボールを蹴った後のアクションと方法、ボールを奪うための思考と動き方などがそれだ。

 もちろん、もっとあるが、個人戦術とは見るべきものが多数ある。オンとオフにも分けられるし、選手本人に聞かないと分からないことも多々ある。頭脳の話なのだから。だからこそ、ここに焦点を絞って考えてみてはどうか。また一層楽しめると思う。

 アナリストとしてもこの観点を重要視している。互いの戦術がどうだったかを見るだけでなく、個人個人の考えはどうなのか、何をどう見たのか、物理的に見えていたか。これらなくしてチーム戦術を紐解こうとすると、落とし穴に正面から突っ込むようなもの。

 サッカーを見る能力を高めましょうと、とある授業を受け持ったこともある。その時に実習として分析レポートを作ってもらった時も、同じだった。互いのシステム、かみ合わせによって空く選手、それを使いこなせないチームと、封じ切るチームでした、のようにシステムありきで見ている人が多かった。これは冒頭の違和感そのものであった。
 
 サッカーを見るのに正解はなく、自由である。チームを見てもいいし、特定の選手を見てもいいし、雰囲気を味わってもいいし、楽しむのが一番だ。

 ただアナリストであれば、それらを高次元で扱わなければならない。つまり、チームだけでも、雰囲気を味わっているだけでも、楽しんでいるだけでも不十分で、「個人も」十分に把握する必要があることだと個人的に思っている。

 日本サッカーはレベルが上がっていると言われるが、ブラジル代表戦で見せつけられた。個人戦術の差はこんなにもありますよ、と。それを上げるには育成年代から「視野」を含めて良い教習所と教習者が必要だろう。運転技術と同じくらい運転戦術なる視野が大事なのだから。

【著者プロフィール】
杉崎健(すぎざき・けん)/1983年6月9日、東京都生まれ。Jリーグの各クラブで分析を担当。2017年から2020年までは、横浜F・マリノスで、アンジェ・ポステコグルー監督の右腕として、チームや対戦相手を分析するアナリストを務め、2019年にクラブの15年ぶりとなるJ1リーグ制覇にも大きく貢献。現在は「日本代表のW杯優勝をサポートする」という目標を定め、プロのサッカーアナリストとして活躍している。Twitterやオンラインサロンなどでも活動中。

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