そしてメキシコ戦でもクオリティの高いパフォーマンスを示した林だが、それだけで手放しの高評価を与えるのはストライカーに失礼というもの。やはりゴールという結果を出せなければ、本当の意味で価値は上がらないだろう。

　南アフリカ戦では３本のシュートを放ち、枠内は２つだった。56分に中山雄太のクロスからGKと１対１になったが、至近距離で相手に阻まれた。

　日本のFWにありがちな現象として、精力的な守備やポストプレー、チャンスメイクに意識が向く分、フィニッシュの仕事でパワーを割けないという傾向がある。だが林の場合はそうした問題はあまりなく、フィニッシュで決め切れるかどうかというところまで来ているのだ。また林本人の能力だけでなく、周囲の選手も林の動きを見て、決定的なパスを供給しようとする意識が見られる。

　あえて厳しい指摘をするならば、例えばボールを受けてシュートする寸前にブロックされて行ききれないシーンが、南アフリカ戦、メキシコ戦と見られた。ただ、そうした２試合の課題も“ビースト”の野性味をさらに研ぎ澄ませていくポジティブな要素だろう。
 

　３試合目のフランス戦で、１点差負けまでは２位以上でのグループステージ突破が決まるが、３連勝で決勝トーナメントに良い流れを持って行くに越したことはない。

　フランスはここまで２試合で５得点・７失点と、ディフェンスより攻撃力が目立っているチームだが、屈強なセンターバックやオーバーエイジのGKポール・ベルナルドニを擁しており、ストライカーの真価を示すには格好の相手だ。日本の勝利プラス、“ビースト”のゴールと雄叫びに期待したい。

文●河治良幸

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