風間八宏監督や中村憲剛も杉本について言及している。大久保と同様、指揮官の意見もやや辛口で、活躍を評価しながらも「これは普通のこと」と語る。
 
「前回のナビスコカップの時にあまり良くなかったので喝を入れたら、その後の２日間はものすごく本気になったというか、そういう姿を見せてくれたので、（今日は）そのまま使った。それがプレーにもそのまま表われましたが、これは普通のことで、良いということではない。これを最低のレベルとして、もっと伸びてほしいし、もっと自分に厳しくやってほしい」（風間監督）
 
　中盤からパスを供給し続けた中村は「今日は２点取ったし、良いと思いますよ。身体も張っているし、こつこつやってくれればいい」と振り返る。「そうは言っても、満足していないでしょう？」と質問を向けると、中村は「もちろん、もっと要求したいことはあるけど……」と続ける。
 
「彼なりに頑張っているし、それがすごく大事。前でキープすることや身体を張ることもそう。それをやろうとしながら点も取っている。もっと緻密にやっていくためには技術が必要になるけど、２点取ったFWの評価について『ダメです』なんて言えないからね」
 
　大久保が“愛のムチ”を振るえば、中村は“寛容のアメ”でケアする。まるで北風と太陽の寓話のように、異なるアプローチで若きストライカーを育てようとしているかのようだ。最後に、中村は大黒柱らしい言葉でこう締めくくった。
 
「フロンターレはFWが点を取って盛り上がるチーム。そういう意味で、嘉人と健勇が点を取ってくれたのは大きい。前が頑張ってくれれば、後ろも一層頑張ろうという気になるから」
 
取材・文：大木 勇（サッカーダイジェスト編集部）