【連載】小宮良之の『日本サッカー兵法書』 其の十九「外国人記者の視点」

カテゴリ:特集

小宮良之

2015年05月21日

外国人が日本人を査定する際は、彼ら独自のフィルターを使う。

プレー面のスカウティングにも、日本人選手の特長と外国人スカウトの基準には齟齬がある。ハーフナーは予備動作に問題を抱え、スペインで成功できなかった。写真:Getty Images

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 当然だが、先入観はプレー面でのスカウティングにも当てはまる。例えば、コルドバがハーフナー・マイクと契約した時、筆者は他クラブのスカウトと連絡を取り、「おそらく定着できない」と直言した。しかし彼らは、ハーフナーの高さやボール技術を“査定”し、「十分にやっていける能力がある。お前はいつも辛口だな」と揶揄するような返答を返してきたが、数週間後、彼らは「お前の言うことが正しかった」と折れてきた。
 
 ハーフナーはゴール前でマークを外すための予備動作を十分にしない。日本やオランダでは通用したのだろうが、スペイン人はマークを外していない選手にはクロスを送らないのである。
 
「その程度の順応は当然だろう? なぜ当たり前のことができない!」
 
 スペイン人は文句を垂れるが、日本人選手は基本能力が高くても、環境に適応できず、持っている武器を出せない面がある。
 
 外国人が見た日本人選手という視点はユニークだし、参考にすべきところがある。しかしながらスペイン人にはスペイン人の、イタリア人にはイタリア人の、ブラジル人にはブラジル人の、各国のサッカー文化に基づいたスカウティングがある。その国のサッカーに精通していればいるほど、その論理に縋り付いてしまう。彼らが日本人を査定する際は彼ら独自のフィルターを使うわけで、それが功を奏することもあれば、裏目に出ることもあるのだ。
 
 補足までに、スペインで成功する日本人とはどんなタイプの選手だろうか?
 
 やはり、適応力や順応性を持っていることが最低条件になる。それは人間として、選手としてのインテリジェンスと書き換えてもいい。「どんな武器を持っているか」は重要ポイントだが、それよりも「武器を出せる柔軟さを持っているか」が必須である。
 
こみや・よしゆき/1972年、横浜市生まれ。大学在学中にスペインのサラマンカ大に留学。01年にバルセロナへ渡りライターに。選手のみならず、サッカーに全てを注ぐ男の生き様を数多く描写。近著に『おれは最後に笑う』(東邦出版)。
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