【三浦泰年の情熱地泰】多くの学びを得た欧州CL決勝。僕がMVPに選出したいのは――

カテゴリ:連載・コラム

サッカーダイジェストWeb編集部

2021年06月03日

選手でMVPを挙げれば文句なしで…

自身3度目の優勝を狙ったグアルディオラ監督だったが、今回は無念の結果に…。(C) Getty Images

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 先発メンバーや采配など、毎日トレーニングを見ていたい人間でなければ分からないことに何か言うことはないが、決勝という一発勝負は監督の判断が非常に難しい。

 フェルナンジーニョが先発でなかったマンCと、カンテを先発で使えたチェルシーの違いは大きかった。個人的には起用の理由というよりも、ボランチの存在の大きさを痛感する内容であった。

 選手でMVPを挙げれば、文句なしで「カンテ」であろう。

 しかしカンテだけでは勝利は掴めない。得点を挙げた選手を忘れてはいけない。29番のカイ・ハベルツを先発に使った采配と、そのチャンスを掴んだ彼の評価を忘れてはいけない。

 影のMVPはチェルシーのアスピリクエタ。膝を痛がり、ゲームの流れを止めたシーンは、リプレーを見ても止める必要がなかったが、さすがのレフェリーも騙された。彼の攻守での動きはマンCの良さを出させない要因となった。

 さらに、アントニオ・リュディガーがデ・ブルイネのスプリントするコースに入り、イエローカードを一枚使って止めたシーンは、レッドは出せないが意図的なファウルだった。

 あの場所(チャンピオンズ・リーグ決勝)に立っている選手にとっては当たり前の自然なプレーであり、選手としてのキャリアから来る長年の勘であり、常識・セオリーでもあり、チェルシーにとってはこの一発勝負での伝説のプレーとも言えるであろう。
 
 チェルシーはチアゴ・シウバが途中でいなくなり、マンCはデ・ブルイネがいなくなり、試合の流れはどう変わっていくのか興味深い展開になったが、得点だけがサッカーの魅力ではないプロフェッショナリズムみたいなものを要所要所で感じられる試合であった。

 華麗にゴール前で崩し切る意外性のあるシーンが多く見られる決勝にはならなかったが、こうやってタイトルを「取る、失う」という勝負のアヤを感じ取ることができる試合を見れた。

 しかし、この高いレベルでプレーしていた日本人がいなかったのは残念だ。数年前にベンチ入りした宇佐美がバイエルンで優勝メンバーとなっているが、この舞台に立つということの価値を深く感じただけに、日本選手が必ずこの舞台に誰かしら立っている、というそんな時代を想像したい。

 興奮して、その日は寝不足気味に一日が過ぎていった。サッカーの魅力をもっともっと自分自身でも伝えていけるようになりたい――。そう感じさせてくれた欧州CL決勝だった。

2021年6月2日
三浦泰年
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