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【5.15コラム】29年目を迎えたJリーグに夢はあるか? 欧州のハイテンポな進化を追走するには…

カテゴリ:Jリーグ

加部 究

2021年05月15日

プロに近い選手人口は急増。しかし子供たちの夢とはまるでかけ離れたプロの現実がある

川崎でプロ1年目から主力のひとりとしてプレーした旗手(47番)やベストイレブンに輝いた三笘も大卒プレーヤー。高校から大学を選択するタレントもまだまだ多いのが現状だ。(C) SOCCER DIGEST

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 裏返せば、Jリーグは子供たちの憧憬の的であり続けなければ、普及は進まず育成も滞る。もちろんプロフェッショナルの厳しさを周知させるのも重要だが、そこに到達したひと握りが豊かな人生を送れる道筋をそろそろ真剣に考えていく必要がある。Jリーグが創設され、文化が芽生え、ボールを蹴る子供たちも増えて、彼らの技術水準も飛躍的に上がった。またJクラブが「54」まで膨れ上がるとともに、J3より裕福な地域クラブも散見され、着実にプレー機会は広がっている。だがせっかくプロ契約に漕ぎ着けても、上限は抑えられているのに下限の設定はない。高校や大学卒業時の契約に関しては、むしろ企業チームが競っていたアマチュア時代の方が恵まれていたくらいだ。そしてプロに近い選手人口は急増中だが、その多くがセカンドキャリア問題から目を背けるように細々と現役を続けている。子供たちの夢とは、まるでかけ離れたプロの現実がある。

 遅咲き傾向の主たる要因は、日本独特の二極構造にある。十代から欧州進出を目標に定めるエリートが存在する一方で、敢えて大学経由を選択する慎重派も少なくない。Jリーグは遅ればせながらエリートリーグを創設し、一時は3つのクラブがU-23チームでJ3に参戦したが、依然として最も伸びていく18歳以降の選手たちに適切な実戦経験を積ませる最適解を見出せていない。

 そこでプロに二の足を踏む選手が多いわけだが、大学へ進めば概して稼げる時間は1~2年間ほどは削られる。それでも最近はレンタル制度を活用し適切なレベルで経験を積ませる努力が進んできたが、やはりプロクラブならアカデミーを設置して終わりではなく、自前で育て上げ収益を上げる道筋を整えなければ意味がない。例えば東京ヴェルディのように傑出して育てた選手を売っているクラブがあるなら、しっかりと潤う仕組みを考案構築していくべきだろう。
 
 もっとも日本サッカー界は、それ以前に育成の重大な欠陥を抱えたまま令和の時代に突入している。頂点にプロという目標は出来たが、それが苦難の末の終着点であってはいけない。本質的にサッカーは子供から大人までが楽しむためのものであり、JリーグはJFAとともに率先して「精神鍛錬」の場だという一部指導者たちの妄想を徹底排除していくべき立場にある。

 また逆に指導者にはもっと広く門戸を開き、公平な自由競争を促すべきだ。S級ライセンスは、プロの指導を真剣に目指す人材が受講するべきものだ。世界を見渡せば、20歳代の優秀な監督が頭角を表わしている。Jクラブの推薦者や実績を残した高校の監督など、狭い世界だけで権利を共有しているようでは刺激が足りない。しっかりと個々の資質を見極め、起爆剤の発掘努力に踏み切らなければ、世界が遠退くのは早い。

文●加部 究(スポーツライター)
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