また、ウイングバックについては「小林（祐三）と下平（匠）は、これまで以上に攻撃に出て行けていた」と、モンバエルツ監督もその仕事ぶりには満足しているようだ。４バックでも両サイドを務める両者は、４-２-３-１の時よりも高い位置にポジションを取り、攻撃に厚みをもたらしていた。
 
　小林と下平の高めのポジショニングは、名古屋の両ウイングバック、永井謙佑と田中輝希を早い段階で牽制するという意味でも、その奮闘は際立っていた。押し込まれた時は素早く帰陣して強固な５バックを形成するなど、ふたりの献身さと高い戦術理解度は攻守両面でチームを下支えしていた。
 
　中澤佑二をセンターに据え、右に富澤清太郎、左にファビオを配置した３バックは、67分に川又堅碁に決定的なシュートを打たれた以外、破たんをきたさずに試合を終えることができた。
 
「より明確にプレッシャーをかけたいという狙いがあった」と中澤は言い、「目の前の相手にしっかりマークに付くことで、それぞれの役割がはっきりする」シチュエーションのなか、個の強さに秀でた横浜の３バックはそれぞれの役割を完遂してみせた。
 
　状況に応じて３人の距離を自在に変えながら不要なスペースを与えず、後方からのボール回しもよどみなかった。なかでも、ボランチも兼任する富澤は相手に寄せられても慌てずにパスをつないで、正確なロングボールを供給するなど、ビルドアップでも頼りになる存在だった。
 
　４-２-３-１にはない「３トップ」「ウイングバック」「３バック」という３つのセクションは、各々の特性を的確に表現して、３-４-３を成立させていた。そのうえで、システムが変わっても、モンバエルツ監督が求める中盤のトライアングルによる局面打開が多く見られていたのも好材料のひとつだが、現体制で鍵を握るのはどうやら２ボランチのようだ。
 
「ボランチのひとりが選手と選手の間に入っていく、あるいはウイングバックに素早くサポートできれば、より多くの三角形を作ることができる。２ボランチは非常に重要」（モンバエルツ監督）
 
　名古屋戦の２ボランチのスタメンは中町公祐と三門雄大で、後半途中から中町に代わって喜田拓也が起用された。３選手とも与えられたタスクを忠実にこなしていたが、指揮官が重視するポジションだけに、現在は負傷離脱中だが、チーム随一の実力者である中村俊輔の起用の可能性はあるのだろうか。
 
「それはひとつの可能性としてあるが、藤本のポジションでの起用という選択肢もある」（モンバエルツ監督）
 
　いずれにせよ、３-４-３は現時点でファーストチョイスでなく、「相手に応じて（４-２-３-１と）併用していきたい」と指揮官は考えている。このふたつのシステム以外にも、８節・広島戦では４-１-４-１を採用するなど、戦術的な幅は確実に広がっている。複数のオプションを携えて、上位進出を目論む横浜の巻き返しに期待したい。
 
取材・文：広島由寛（サッカーダイジェスト編集部）