このまま有効な策を講じられなければ、“風間スタイル”の限界は近い。
中盤でボールを捌き続けた中村は“MF視点”でこう語る。
「特に前半は、相手が守備を固めているようでも、一番奥に入った(川崎の)選手はフリーだったので、そこで丁寧に崩せれば良かった。イメージとしては、一度ボールを当てて落として、そこから前を向いて3対3とか。崩し方としては申し分なかったんですが、最後の質をもう少し丁寧にやれば崩せたと思う」
中村は後半のワンシーンを崩しの例に挙げる。それは、自身のふわりとしたパスから大久保がDFの裏に飛び込み頭で合わせたものだった。「相手がいても崩せる自信はある」と断言したが、それはあくまでも最後の局面で呼吸があった場合という条件付きだ。
「最終的には、人とボールが合えば点になる。(大久保)嘉人のヘディングもそう。そういうのを一人ひとりが突き詰めてやっていかないといけない」
最後は角田誠の“DF視点”だ。
開始3分、谷口彰悟と角田がお見合いする形でボールを奪われて失点。結果的にこの失点が試合の流れを大きく左右したが、以降は川崎が主導権を掌握していただけに、「ミスは仕方ないし、そのあとに巻き返せるチャンスは十分にあった」と語る。
試合の総括は「点が入らなかったことがすべて」と肩を落とし、攻撃の課題をこう口にする。
「ボールをつないでいけばチャンスは作れると思っていたし、ハーフタイムもそういう指示だった。後ろから見ていると、シュートを打てるところでもう一回持ったりしていた。シュートを打てばDFに当たってこぼれてくる可能性もあるわけで、あれだけペナルティエリア内に入っているわけだから打たないと。だけど、それは前の選手の判断だから、それについてとやかく言うつもりはない」
今の川崎は「(攻撃に)出てくる相手にしか有効な攻撃ができない」(大久保)という状態。相手に研究されるなか、いかに攻撃サッカーでこじ開けるか。有効な策を講じられなければ“風間スタイル”の限界は近い。中村&大島の2ボランチ解体、角田のボランチ起用など抜本的な見直しも不可欠。少なくとも、今のままでは優勝に手が届かないのは明白だ。
取材・文:大木 勇(サッカーダイジェスト編集部)