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連載|熊崎敬【蹴球日本を考える】鹿島が勝負へのしたたかさを失ってしまったのはなぜか?

カテゴリ:Jリーグ

熊崎敬

2015年05月06日

日本には社会のなかにサッカーがない。

6度目のACLで初のグループステージ敗退となった鹿島。その戦いぶりにかつてのしぶとさ、したたかさはなかった。写真:徳原隆元

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 セレーゾ監督の意見は説得力がある。
 日本では停電、断水が滅多になく、電車やバスが遅れることも少ない。駅では3、4分遅れただけでアナウンスがあるが、そんなものは遅れたうちには入らない。そして街には24時間オープンのコンビニが乱立し、欲しいものをいつでも手に入れることができる。
 
 こうした社会に生きていると、人間は知らず知らずのうちに想像力や決断力、柔軟性を失っていく。いずれもサッカーに欠かせない要素だ。
 
 敵がいて、手を使えず、打ち合わせ通りにならないことが多いサッカーは、即興の漫才のようなもの。引き出しの多さと閃きによって目の前の課題を解決していかなければならない。
 
 コンビニに行けばなんでもあり、電車は遅れず、暴動が起きない社会に生きている人間と、店に行っても商品は少なく、本数の少ない電車はいつ来るか分からず、暴動が頻繁に起きる社会に生きる人間とでは、どちらがサッカーに向いているだろうか。
 
 セレーゾ監督が育ったブラジル、南米では日常が不確定要素に満ちているため、サッカーをしなくてもサッカー的な感覚が養われる。翻って日本は日常に不確定要素が少ないため、サッカー的なマインドが身につかない。社会のなかにサッカーがないからだ。この差は如何ともしがたい。
 セレーゾ監督は、そういうことを嘆いているのだ。
 
 いまのJリーガーは、ほとんどが幼い頃からサッカー漬けだっただろう。それも原っぱで存分に遊ぶのではなく、大人たちが仕切る塾のようなところで技術、戦術を学ぶ。こういうところでは、不確定要素に柔軟に対応する感覚はなかなか身につけられない。
 
 では、どうすればサッカーが上手くなるのか。
 ひとつのアイデアとして、私はサッカーを離れることを提唱したい。サッカーを離れて、麻雀、花札、囲碁、将棋をやればいいと思うのだ。こういう遊びは、サッカーに欠かせない敵の意図を読み、裏をかく感覚、リスクを負って勝負する度胸を確実に養ってくれる。
 
 海外に出ると、驚くほど多くの人々が日常の中で賭け事に興じている。そういえばブラジルも、公園には決まってゲーム用の机と椅子がいくつもあり、男たちが日々、真剣なまなざしでドミノやカードゲームに打ち込んでいた。
 
 日本では、あまり見られなくなった光景。勝負のなんたるかを知らない人々がボールを蹴り、サッカーを語るようになって、日本サッカーはしたたかさを失ってしまった。
 
取材・文:熊崎 敬
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