【連載】識者同士のリーガ放談「あえて守備から読み解くリーガ・エスパニョーラ」

カテゴリ:ワールド

豊福晋

2015年05月01日

オタメンディは能力的にマテューを大きく上回る。

S・ラモスやペペなど世界屈指のCBを揃えるマドリーだが、守備組織の完成度ではアトレティコに大きく及ばない。 (C) Getty Images

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豊福:最少失点を誇るバルサの守備についてはどうでしょう?

ロホ:バルサは全体、とくに中盤の守備が機能しないと、最終ラインはかなり危なっかしい。最前線はスアレス以外が守備に意欲的じゃないし、ほとんど貢献しないから、どうしても中盤にしわ寄せがくるんだ。ここのフィルターが十分にかからないと、破綻を来してしまうことになる。

豊福:19失点とたしかに数字はいいんですが、バルサの守備を評価できないのはそういうところなんでしょうね。

ロホ:とくにおぼつかないのが、ダニ・アウベスの右サイドと、このところは良くなったとはいえ、ピケのところだね。シーズン序盤のピケは、それにしても心許なかった。だいぶ持ち直して、最近のパフォーマンスは評価できるが、基本的に1対1がそれほど強くないから。

豊福:これまでもクリスチアーノ・ロナウドに散々やられていますよね。個人的には、マスチェラーノがいないとバルサの後ろはもたないと思いますね。相手のFWにしっかりと詰められるし、チームとして苦手なカウンターへの対応が一番上手い。

ロホ:一方で、マドリーはちょっと攻撃的に過ぎる。カルバハル、マルセロ、セルヒオ・ラモスも攻めたがるからね。アンカーにいるのも、本来はひとつ前のポジションのクロースだ。

豊福:でも、マドリーは個の力は卓越している。素晴らしいタレントが揃っていますよ。セルヒオ・ラモスにペペ、そしてヴァランヌ。欧州でもトップレベルのCBが3人もいる。ヴァランヌはあの体格(191センチ・78キロ)で信じられないほどのスピードがあるから、ピケと違って1対1にも強い。

ロホ:たしかにタレント力ならマドリーに一日の長があるかもしれないが、組織力の点ではアトレティコに及ばない。ずいぶんとレベルが下がるよ。

豊福:まずまずの結果を出しているのがバレンシアです。

ロホ:アトレティコと並んで高く評価したいのが、そのバレンシアだ。ヌーノ監督はとくに守備面でいい仕事をしている。新加入のオタメンディの存在が大きいね。バルサに放出したマテューよりも、ディフェンダーとしての能力ははるかに上だ。オタメンディがいなかったら、ここまで守備が安定していたか。

 ただ、バレンシアも最終ラインだけでなく、中盤、前線を含めたチームとしての守備が非常にしっかりしている。組織がきちんと整備されているんだ。プレスが効果的にかかっているだろう。

豊福:そのバレンシアとチャンピオンズ・リーグの出場権(4位以内)を争うセビージャは、守備がアキレス腱ですね。

ロホ:組織の完成度という点に絞ってランク付けするなら、圧倒的大差でアトレティコがトップ。その次は、スタイルの違いがあるからなかなか難しいが、バレンシアとバルセロナが並び、4位がマドリー。セビージャはそれに大きく遅れをとっている。そんな感じだろう。

豊福:セビージャの失点は38。試合数を上回っています。エメリ監督は守備に関してはしっかりとした組織を作るタイプなので、ちょっと驚きでした。

ロホ:守備の課題をしきりと挙げているからね。本人も納得できないようだ。もう少し守備が安定していたら、もっと勝点を積み上げていただろう。しかも、よりによってCBパレハが怪我をしてしまったよね(右膝前十字靭帯の断裂で全治6~7か月)。あまりに痛い。

豊福:セビージャは堅守のバレンシアと4位を争っています。もしかしたら、守備の差が明暗を分けることになるかもしれませんね。

構成・文:豊福晋
協力:ルイス・フェルナンド・ロホ(マルカ紙) Luis Fernando ROJO(MARCA)
 
【著者プロフィール】
豊福晋
1979年、福岡県生まれ。2001年のミラノ留学を経て、フリーで取材・執筆活動を開始。イタリア、スコットランドと拠点を移し、09年夏からはスペインのバルセロナに在住。リーガ・エスパニョーラを中心に、4か国語を操る語学力を活かして欧州フットボールシーンを幅広く、ディープに掘り下げている。独自の視点から紡ぐ、軽妙でいて深みのある筆致に定評がある。
 
Luis Fernando ROJO
ルイス・フェルナンド・ロホ

スペイン最大の発行部数を誇るスポーツ紙『マルカ』でバルセロナ番を20年以上務め、現在は同紙のバルセロナ支局長。ヨハン・クライフら往年の選手とも親交が深く、ジョゼ・モウリーニョとはロブソンの通訳時代から親密な関係を築く。
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