――今季は“ストップ川崎”もテーマになりそうです。
佐藤 他のチームがもっと対策を練らないとですよね。川崎にストロングを出させちゃうとやっぱり分が悪い。開幕戦で対戦したマリノスの狙いも少しハッキリしなかったのかなと。がっぷり四つでやったら、やられる可能性は高まっちゃう。それだけ川崎の質は高いので。
中村 マリノスは外国人選手が戻ってきてからどうなるか。(開幕戦では)ジュニオール・サントス(広島へ移籍)、エリキ(パルメイラスへレンタルバック)、マルコス・ジュニオール(開幕戦は欠場)がいないのは推進力という意味でやはり痛かったかなと。3-4-3で打開しようとしていたけど、新システムはまだ発展途上の印象で、ポステコグルー監督は葛藤があったのかもしれないけど、後半に4-4-2に変えて光明が見えた点も、今後に向けてどう捉えるのか。
佐藤 あの試合、川崎も2-0だったから、後半に意図的にペースダウンした面もありましたよね?
中村 でも後半にボールを持たれる時間が増えたのは、ゼロックス(・スーパーカップ)でのガンバ戦(〇3-2)と同じ傾向にあって、前の3枚と中盤のプレッシングの息が少し合わなくなって、圧が弱まりがちな時間帯が今後の鍵なのかなと。あとは良くも悪くも(新加入のアンカー、ジョアン・)シミッチのところ。
佐藤 彼はボールを持てますけどね。
中村 そう、ボールを持てるのは素晴らしい魅力で、一方で守備のところ。(ポルトガルへ移籍した)守田は幅広いエリアをカバーできる能力を持っていたからね、シミッチの個性をチームとしてどう活かすか。
佐藤 中盤の強度ということですね。
ストップ川崎がテーマに
中村 そうそう、あとはインサイドハーフとのバランス。(脇坂)泰斗と(田中)碧がシミッチの脇のスペースをカバーする動きも含め、その辺りは今後試合と練習を繰り返しながら合わせていくのかなと感じるね。
佐藤 でもやっぱり川崎をどう止めるかですよ。以前、Jリーグの24時間の生配信で闘莉王も「今年もフロンターレでしょ。何節前に優勝するのか」と話していました(笑)。
中村 いやでも、俺は皆が言うほど簡単ではないと思っているんだけど。
佐藤 でも試合途中からギラギラした(小林)悠が出てくる。そんな選手層ですよ。半端ないです。
中村 まあ俺も昨年は選手としてフロンターレが苦戦した試合も経験しているし、難しい時期も見てきたけど、外から客観的に見るようになると、やっぱり強さは感じるよね。こりゃ成績も残せるよなと。
佐藤 当たり前のことを当たり前にやれるわけじゃないですか。それが強さの証ですよ。ミスの種類も他のチームと異なりますから。
中村 確かにパススピードも違うところはあると思う。
佐藤 質はかなり高いですよ。
中村 俺がフロンターレを褒めるというのはなかなか難しいけど……。
佐藤 言いにくい部分はありますよね。そこは僕とナラさんがやります。
楢﨑 俺から見れば川崎は良いところしかないけどね。
中村 あとは今年は若い選手が増えたけど、途中から流れを変える選手がどれだけ出てくるか。例えば(大卒ルーキーの)橘田(健人)はやりそうな雰囲気はありますね。
(後編へ続く)
■プロフィール
楢﨑正剛(ならざき・せいごう)/1976年4月15日生まれ、奈良県出身。日本を代表するGKで、18年限りで現役を引退。現在は後進の育成に励み、名古屋でクラブスペシャルフェロー、アカデミーダイレクター補佐、アカデミーGKコーチを務め、先日JFAナショナルトレセンコーチにも就任。
中村憲剛(なかむら・けんご)/1980年10月31日生まれ、東京都出身。川崎一筋を貫いた“バンディエラ”で昨年限りで現役を引退。今年、川崎のフロンターレ・リレーションズ・オーガナイザー(FRO)に就任した。育成現場で指導法を学びつつ、解説業やクラブのPRなど様々な分野で活躍。
佐藤寿人(さとう・ひさと)/1982年3月12日生まれ、埼玉県出身。歴代最多となるJ1、J2通算220点を奪った生粋のゴールハンターで名古屋では楢﨑と共闘。2020年限りで現役を引退した。今後のテーマは“ストライカーの育成”であり、解説者などとしても幅広く活動している。
取材・文●本田健介(サッカーダイジェスト編集部)