――分かりました、では気になるチームはどうでしょう？（編集部・注／インタビューは開幕戦直後に実施）

佐藤　やっぱり川崎と補強をした名古屋じゃないですか？

楢﨑　いや川崎やろ。やっぱり強い。ひとつ抜けているなと。

佐藤　確かにクオリティが違います。

中村　でも自分からすれば、川崎は昨シーズンからの流れを継続しているなという印象ではあるんです。それよりも他のチームをここまでよく追って見たことがなかったので、新鮮だなと。特に新監督になったチームは色が出ていて興味深い。それこそ浦和はそうですよね。

楢﨑　（開幕戦を見て）浦和はどうやった？

中村　結構、変わった印象ですよね。スタメンを含めてロドリゲス監督の色がすごく表われているなと。後ろからの丁寧なビルドアップもそうだし、立ち位置を変えながら敵陣に進攻していくところなど、徳島でやっていたサッカーが出ていますよね。

楢﨑　（17年に）Ｊ２でロドリゲス監督が就任１年目だった徳島と対戦して良いサッカーをするなという印象がすごく強かった。それは鮮明に覚えている。フレッシュで誰もがボールに関わっていて。だからロドリゲス監督が浦和をどう変えるのか、気になるよね。どれだけ時間がかかるのかというのはあると思うけど。

中村　確かに就任してからまだ日が浅いですからね。でも開幕戦では、ＦＣ東京を相手にあれだけできたというのは、自信になったかもしれない。我慢して続ければ、面白いスタイルを築けるかもしれないですよ。やっぱり浦和は個の力は高いですからね。監督が何かを伝えた時の“反発力”は良さそうです。今季からまたキャプテンを任された阿部勇樹も相当に賢い選手ですから。その彼がチームの今季初ゴールを決めたのもなにか意味があるのかなと。

佐藤　あの試合は阿部ちゃんもそうですし、同点弾の森重（真人）も含めベテランの活躍が光りましたよね。
 

中村　ベテランは頑張っている。

佐藤　開幕のキャッチフレーズは「＃２０２１のヒーローになれ」だったじゃないですか。ヒーローと言われれば若手から出てくるイメージが強いかもしれないですが、ベテランでもヒーローになれるという例ですよね。それを見せてくれたなと。

中村　さすがのコメントだね。今シーズンのキャッチフレーズを入れてくるという。しっかりしてるわ（笑）。

楢﨑　助かるね。こっちは試合を見直すことしかできないから（笑）。

中村　一番の年長者がそれじゃ困るんですけどね（笑）。そう考えると（大久保）嘉人やアキ（家長昭博）も良かったしね。

佐藤　嘉人のゴールは多くの人が待ち望んでいましたよね。

中村　あいつは本当に凄い。ここ２、３年、相当に言われてきたから。

佐藤　それを撥ねのけるのが嘉人。

中村　ゴールでその声を抑える。本当に格好良い。それまでの苦悩を知っている分、より嬉しかったな。

楢﨑　あの（開幕戦でクロスにニアでヘッドで合わせる）ゴールは寿人が教えたんでしょ？

佐藤　本人はそう言ってたらしいですけど、そんなことはないんですよ。

楢﨑　え、ほんとに言ってたの？

佐藤　その前に調度、嘉人と対談をして、そんな話はしていたんです。

中村　ちょっと待って、ナラさん今の当てずっぽうに言ったの？

楢﨑　うん（笑）。

佐藤　嘘!?　でも色々、話はしていて。あのゴールの直前に味方がボレーを打って、こぼれ球に対して嘉人は誰よりも速く反応していたんです。そういう話もしていて。頭も整理されて身体も動いているなという印象でした。あのゴールシーンも動き直して良いポジションに入っている。動きに連続性がありました。

中村　今年は体重を落としてプレシーズンに入っていると言ってたね。

佐藤　そうそう、でも、それだったら毎年そうしろよというツッコミも入れたくなるんですが（笑）。今年は追い込んだと言ってました。

楢﨑　まあ今、気付くこともあるんだろ。進化しているということや。

佐藤　まあそうなんですけどね。

中村　今の若い子は意識がすごく高い。でも嘉人はある意味、Ｊリーグを長く知っている男だから。最後までそうであってほしいという想いも。

佐藤　でも嘉人も変わっているんですよ（笑）。

中村　そうだよね、時代に迎合していっている部分もあるんだよね（笑）。でもやっぱりゴールは取るから、続けてほしいよ。それにセレッソはタレントも揃っている。中盤にはキヨ（清武弘嗣）らがいて、丸橋（祐介）選手、松田（陸）選手という素晴らし両ＳＢもいて、サイドからの展開も含めてＦＷとしてプレーしやすい環境かなと感じるな。

（中編へ続く）

■プロフィール
楢﨑正剛（ならざき・せいごう）／1976年４月15日生まれ、奈良県出身。日本を代表するＧＫで、18年限りで現役を引退。現在は後進の育成に励み、名古屋でクラブスペシャルフェロー、アカデミーダイレクター補佐、アカデミーＧＫコーチを務め、先日ＪＦＡナショナルトレセンコーチにも就任。

中村憲剛（なかむら・けんご）／1980年10月31日生まれ、東京都出身。川崎一筋を貫いた“バンディエラ”で昨年限りで現役を引退。今年、川崎のフロンターレ・リレーションズ・オーガナイザー（FRO）に就任した。育成現場で指導法を学びつつ、解説業やクラブのＰＲなど様々な分野で活躍。

佐藤寿人（さとう・ひさと）／1982年３月12日生まれ、埼玉県出身。歴代最多となるＪ１、Ｊ２通算220点を奪った生粋のゴールハンターで名古屋では楢﨑と共闘。2020年限りで現役を引退した。今後のテーマは“ストライカーの育成”であり、解説者などとしても幅広く活動している。

取材・文●本田健介（サッカーダイジェスト編集部）