新指揮官は初陣で勝利を手にした
その本人が、1週間のホテル待機(コロナ対策)を終えて、ついに練習場と記者会見場に現れたのである。初試合となる10日のレンヌ戦まで、トレーニング期間は2日。たった2日でどれだけチームを変えられるのか、であった。このため10日付けの仏大手紙『L’EQUIPE』も「反逆の夜に?」の見出しで記事を掲げ、注目した。
そしてサンパオリは、本当に反逆の鐘を鳴らすことに成功したのだ。
現地時間10日夕に出現したシステムは驚きの5-3-2。センターバックではアルバロ・ゴンサレスの代わりに同胞レオナルド・バレルディが起用され、フロリアン・トバンとサイフ=エディン・カウイは中盤ルレイヤー(ポジティブ・トランジッションを担うリレー役)に変身。哲学は「4人で守って6人で攻める!」だった。前任者とは正反対である。ついでにサンパオリ本人も、コーチングゾーンを狂った車のワイパーのように動き続けた。
この結果、ピッチ上に明らかな変化が見えた。ブバカール・カマラと酒井宏樹を含む数人を除くとやたら動きがなかった過去に比べ、少なくとも必死の動きや走りが全体に表われていた。
ワンタッチ、ツータッチのパスワークも意識され、決定力はまだ不足気味とはいえ果敢な攻撃波が生まれたのだった。しかも采配も的中し、終盤に投入されたダリオ・ベネデット、ルイス・エンリケ、ミカエル・キュイザンスが3人とも絡んで、88分にキュイザンスがゴール。土壇場だったが、サンパオリは初試合で1-0の勝利をもたらした。
そしてサンパオリは、本当に反逆の鐘を鳴らすことに成功したのだ。
現地時間10日夕に出現したシステムは驚きの5-3-2。センターバックではアルバロ・ゴンサレスの代わりに同胞レオナルド・バレルディが起用され、フロリアン・トバンとサイフ=エディン・カウイは中盤ルレイヤー(ポジティブ・トランジッションを担うリレー役)に変身。哲学は「4人で守って6人で攻める!」だった。前任者とは正反対である。ついでにサンパオリ本人も、コーチングゾーンを狂った車のワイパーのように動き続けた。
この結果、ピッチ上に明らかな変化が見えた。ブバカール・カマラと酒井宏樹を含む数人を除くとやたら動きがなかった過去に比べ、少なくとも必死の動きや走りが全体に表われていた。
ワンタッチ、ツータッチのパスワークも意識され、決定力はまだ不足気味とはいえ果敢な攻撃波が生まれたのだった。しかも采配も的中し、終盤に投入されたダリオ・ベネデット、ルイス・エンリケ、ミカエル・キュイザンスが3人とも絡んで、88分にキュイザンスがゴール。土壇場だったが、サンパオリは初試合で1-0の勝利をもたらした。
ちなみに先発した長友佑都も溌剌と動き、攻め上がる大きなレンヌ選手の腹の中に入り込みながら守りきったシーンでは、解説者シドネー・ゴヴ(元フランス代表)が「これはもう経験ですね、経験」と思わず感心していた。
厳しい『L’EQUIPE』も、「サイドバックのバレエ(ダンス)はまだ完全に統一指揮されていなかったが、リロラは前半、ナガトモはむしろ後半に適切なプレーをした」として、採点で「5点」をつけた。試合グレードも役割も違うため比較はできないが、チャンピオンズ・リーグのパリSG対バルセロナ戦(1-1)でゴールを決めたキリアン・エムバペでさえ「5点」だったのだから、悪くない評価と言えるだろう。
ホルヘ・サンパオリは試合後、「私は熱くなっていた。このクラブとその歴史の高みに至れないのでは、とちょっと怖くも思っていた」と語り、意外な謙虚さも垣間見せた。この町では誰が主人公なのかを知っている様子で、11日にはフランス全土のマルセイユ・サポーターも、「あいつベンチ上で死ぬんじゃないかと心配だな」「パリの試合ぶりの酷かったこと」と、やっと笑顔を取り戻した。いずれも最高級の誉め言葉だ。
サポーターの反逆から2か月余。3月10日は、マルセイユのピッチ上に反逆の鐘が打ち鳴らされた夜だった。あとはどこまでやれるか、である。サンパオリはこう明言している。
「一部の選手たちはすぐ適応するだろう。一部の選手たちは時間をかけて適応するだろう。そして一部の選手たちは適応できないだろう」
この指揮官の下では、選手たちは激しき戦士となり、自分の中に反逆精神を起こさねばならないようだ。
取材・文●結城麻里
text by Marie YUUKI
厳しい『L’EQUIPE』も、「サイドバックのバレエ(ダンス)はまだ完全に統一指揮されていなかったが、リロラは前半、ナガトモはむしろ後半に適切なプレーをした」として、採点で「5点」をつけた。試合グレードも役割も違うため比較はできないが、チャンピオンズ・リーグのパリSG対バルセロナ戦(1-1)でゴールを決めたキリアン・エムバペでさえ「5点」だったのだから、悪くない評価と言えるだろう。
ホルヘ・サンパオリは試合後、「私は熱くなっていた。このクラブとその歴史の高みに至れないのでは、とちょっと怖くも思っていた」と語り、意外な謙虚さも垣間見せた。この町では誰が主人公なのかを知っている様子で、11日にはフランス全土のマルセイユ・サポーターも、「あいつベンチ上で死ぬんじゃないかと心配だな」「パリの試合ぶりの酷かったこと」と、やっと笑顔を取り戻した。いずれも最高級の誉め言葉だ。
サポーターの反逆から2か月余。3月10日は、マルセイユのピッチ上に反逆の鐘が打ち鳴らされた夜だった。あとはどこまでやれるか、である。サンパオリはこう明言している。
「一部の選手たちはすぐ適応するだろう。一部の選手たちは時間をかけて適応するだろう。そして一部の選手たちは適応できないだろう」
この指揮官の下では、選手たちは激しき戦士となり、自分の中に反逆精神を起こさねばならないようだ。
取材・文●結城麻里
text by Marie YUUKI