フェライニの使われ方はモイーズ時代のエバートンに近い。
山中:逆にユナイテッドは、シーズンが始まった頃はCL出場枠の確保は難しいとさえ言われていて。自分も5位予想でしたけど、いつの間にか立ち直って帳尻を合わせてきた。こちらの新聞では、ファン・ハールの指示が、やっと選手に浸透してきたという見方もありますが、田邊さん的にはどう思います?
田邊:僕はまだ懐疑的かなあ。日本の解説者の中にも、ファン・ハールが選手を使いこなせるようになってきた結果だと主張する人はいます。たしかにそういう側面もあるんでしょうけど、そもそもフェライニなどはファン・ハールが監督になったばかりの頃は、まったく評価されていなかったじゃないですか?
山中:そう。放出候補と言われていた。モイーズ体制の負の遺産とか(笑)。
田邊:でも実際には、そのフェライニが重用されてしまっている。勝ちに優るものはないし、チームの調子が上向いてきたのは事実でも、これが果たしてファン・ハールが本来やりたかったサッカーなのかなと疑問を感じたりする。
山中:同じカウンターでも、オランダ代表がブラジルでやったサッカーとは相当違いますよね。フェライニはシティ戦でもすごく効いていたけど、チームとしてやっているサッカーはすごくベーシック。
田邊:そう、そこなんですよ。ぶっちゃけて言うと、いまのユナイテッドにおけるフェライニの使われ方は、下手をするとモイーズ時代のエバートンに近い(笑)。それを考えた場合、仮にいまのサッカーでCLの出場枠を取ることができたとしても、来シーズン、ヨーロッパのライバルと戦った時に通用するのかと。
山中:まぁ、まずはヨーロッパに戻るのが先決ってことなんでしょう。でも攻撃のオプションとか細かな崩し方のバリエーションの多さは、むしろシティの方が上回っている。例えばいまのユナイテッドは、シティが先制点を奪った時のような攻撃のパターンを持っていない。
それでも勝ちきるというのはファン・ハールのファン・ハールたる所以かもしれないですけどね。最近では、なんで勝てているのかわからないのに、結果だけはついてきているということで、タブロイドの記者からは「ルイス・ファン・ハール」じゃなくて「ラッキー・ファン・ハール」とか呼ばれていましたから(笑)。
田邊:「(不思議な勝負強さを)持っている監督」というよりは、「ついているだけの監督」(笑)。サイモン(クーパー)が書いているほど、戦術家として劣化したとは思わないけど、来シーズンに向けての課題は多い。
山中:ユナイテッドでは今夏の補強、シティはマネジメントの問題が、ますますクローズアップされていきますね。
田邊:タブロイドの中には、シティのユースに関わっているヴィエラが、ペレグリーニの後釜に座るんじゃないかと書いているところもある。山中さんの意見はどうですか?
山中:正直、シティ番の記者に聞いても、さほど評価が高いわけでもないから、仮に1軍に上がったとしても、繋ぎにしかならない気はしますね。
田邊:6年前のアラン・シアラー(ニューカッスル)状態。
山中:ええ。そう考えると、希望的観測を含めてグアルディオラ待ちなのかと。
田邊:もともとシティのオーナーは、プレミア版のバルサを作りたくてソリアーノとベギリスタインをフロントに呼んだわけですから。
山中:アンチェロッティ(レアル・マドリー監督)のポストが空くという話もあるけど、やっぱりペップが本線でしょうね。
田邊:と思います。だいたいアンチェロッティはまずいですよ。彼を呼んだりしたら、プレミア版のバルサじゃなくて、プレミア版のレアルができてしまう(笑)。個人的には、クロップがシティの監督になるという噂が一気に広まると思いますけどね。
山中:ええ。キャラ的にイングランドのメディア向きという要因もあるような気もしますが、すでにいろんなクラブの名前が挙がっている。枕を高くして寝られなくなるのはペレグリーニだけじゃない。
田邊:いずれにしても、ムード作りの面でも、プレミア全体の戦術やゲーム自体のレベルを高めるという点でも、マンチェスターダービーには、もうちょっと熱くなってもらわないと。ユナイテッドは勢いがあるけど、ヨーロッパのビジョンが見えない。シティはチームとして練れているのに勝負弱いし、ペレグリーニ体制が限界に達しつつある。どちらにしても結構悩ましい。
山中:ですね。チェルシー派としては感情移入できませんけど(笑)。
構成・文:田邊雅之
協力:山中忍
【識者プロフィール】
田邊雅之
1965年、新潟県生まれ。『Number』をはじめとして、学生時代から携わっていた様々な雑誌や書籍の分野でフリーランスとして活動を始める。2000年からNumber編集部に所属。プレミアリーグ担当として数々の記事を手がけた後、南アフリカW杯を最後に再びフリーランスとして独立。主な著書に『ファーガソンの薫陶』(幻冬舎)、翻訳書に『知られざるペップ・グアルディオラ』(朝日新聞出版)」等がある。最新の翻訳書は『ルイ・ファンハール 鋼鉄のチューリップ』(カンゼン)。
山中忍
1966年生まれ、青山学院大学卒。94年渡欧。イングランドのサッカー文化に魅せられ、ライター&通訳・翻訳家として、プレミアリーグとイングランド代表から下部リーグとユースまで、本場のサッカーシーンを追う。西ロンドン在住で、チェルシーのサポーター。
田邊:僕はまだ懐疑的かなあ。日本の解説者の中にも、ファン・ハールが選手を使いこなせるようになってきた結果だと主張する人はいます。たしかにそういう側面もあるんでしょうけど、そもそもフェライニなどはファン・ハールが監督になったばかりの頃は、まったく評価されていなかったじゃないですか?
山中:そう。放出候補と言われていた。モイーズ体制の負の遺産とか(笑)。
田邊:でも実際には、そのフェライニが重用されてしまっている。勝ちに優るものはないし、チームの調子が上向いてきたのは事実でも、これが果たしてファン・ハールが本来やりたかったサッカーなのかなと疑問を感じたりする。
山中:同じカウンターでも、オランダ代表がブラジルでやったサッカーとは相当違いますよね。フェライニはシティ戦でもすごく効いていたけど、チームとしてやっているサッカーはすごくベーシック。
田邊:そう、そこなんですよ。ぶっちゃけて言うと、いまのユナイテッドにおけるフェライニの使われ方は、下手をするとモイーズ時代のエバートンに近い(笑)。それを考えた場合、仮にいまのサッカーでCLの出場枠を取ることができたとしても、来シーズン、ヨーロッパのライバルと戦った時に通用するのかと。
山中:まぁ、まずはヨーロッパに戻るのが先決ってことなんでしょう。でも攻撃のオプションとか細かな崩し方のバリエーションの多さは、むしろシティの方が上回っている。例えばいまのユナイテッドは、シティが先制点を奪った時のような攻撃のパターンを持っていない。
それでも勝ちきるというのはファン・ハールのファン・ハールたる所以かもしれないですけどね。最近では、なんで勝てているのかわからないのに、結果だけはついてきているということで、タブロイドの記者からは「ルイス・ファン・ハール」じゃなくて「ラッキー・ファン・ハール」とか呼ばれていましたから(笑)。
田邊:「(不思議な勝負強さを)持っている監督」というよりは、「ついているだけの監督」(笑)。サイモン(クーパー)が書いているほど、戦術家として劣化したとは思わないけど、来シーズンに向けての課題は多い。
山中:ユナイテッドでは今夏の補強、シティはマネジメントの問題が、ますますクローズアップされていきますね。
田邊:タブロイドの中には、シティのユースに関わっているヴィエラが、ペレグリーニの後釜に座るんじゃないかと書いているところもある。山中さんの意見はどうですか?
山中:正直、シティ番の記者に聞いても、さほど評価が高いわけでもないから、仮に1軍に上がったとしても、繋ぎにしかならない気はしますね。
田邊:6年前のアラン・シアラー(ニューカッスル)状態。
山中:ええ。そう考えると、希望的観測を含めてグアルディオラ待ちなのかと。
田邊:もともとシティのオーナーは、プレミア版のバルサを作りたくてソリアーノとベギリスタインをフロントに呼んだわけですから。
山中:アンチェロッティ(レアル・マドリー監督)のポストが空くという話もあるけど、やっぱりペップが本線でしょうね。
田邊:と思います。だいたいアンチェロッティはまずいですよ。彼を呼んだりしたら、プレミア版のバルサじゃなくて、プレミア版のレアルができてしまう(笑)。個人的には、クロップがシティの監督になるという噂が一気に広まると思いますけどね。
山中:ええ。キャラ的にイングランドのメディア向きという要因もあるような気もしますが、すでにいろんなクラブの名前が挙がっている。枕を高くして寝られなくなるのはペレグリーニだけじゃない。
田邊:いずれにしても、ムード作りの面でも、プレミア全体の戦術やゲーム自体のレベルを高めるという点でも、マンチェスターダービーには、もうちょっと熱くなってもらわないと。ユナイテッドは勢いがあるけど、ヨーロッパのビジョンが見えない。シティはチームとして練れているのに勝負弱いし、ペレグリーニ体制が限界に達しつつある。どちらにしても結構悩ましい。
山中:ですね。チェルシー派としては感情移入できませんけど(笑)。
構成・文:田邊雅之
協力:山中忍
【識者プロフィール】
田邊雅之
1965年、新潟県生まれ。『Number』をはじめとして、学生時代から携わっていた様々な雑誌や書籍の分野でフリーランスとして活動を始める。2000年からNumber編集部に所属。プレミアリーグ担当として数々の記事を手がけた後、南アフリカW杯を最後に再びフリーランスとして独立。主な著書に『ファーガソンの薫陶』(幻冬舎)、翻訳書に『知られざるペップ・グアルディオラ』(朝日新聞出版)」等がある。最新の翻訳書は『ルイ・ファンハール 鋼鉄のチューリップ』(カンゼン)。
山中忍
1966年生まれ、青山学院大学卒。94年渡欧。イングランドのサッカー文化に魅せられ、ライター&通訳・翻訳家として、プレミアリーグとイングランド代表から下部リーグとユースまで、本場のサッカーシーンを追う。西ロンドン在住で、チェルシーのサポーター。