大金を投入して獲得した選手は先発に定着せず
そのため、失敗例も幾多とあるのだ。
クラウス・ミシェル・キューネがバックにいるハンブルクも、ハサン・イスマクがスポンサーとして関わる1860ミュンヘンも、今どこにいるだろう。ハンブルクは2部リーグ3シーズン目、1860ミュンヘンは一時的に4部リーグでプレーするまで落ちていた。夢見たような欧州のトップとはほど遠い場所で、クラブの存続をかけて戦っている。口当たりがいいだけのプロジェクトではうまくいかない。
プレーツSDは「若く、ハングリーで、タレント性の豊富な選手とともに上を目指す」と語り、資金力をバックに大幅な戦力補強に乗り出した。過去の補強費レコードを次々に更新していく。
ブラジル代表マテウス・クーニャを1800万ユーロで獲得したのを筆頭に、この1年半の間にワトフォードからドディ・ルケバキオ(2000万ユーロ)、リヨンからリュカ・トゥザール(2500万ユーロ)、ACミランからクシシュトフ・ピョンテク(2700万ユーロ)、シュツットガルトからサンティアゴ・アスカシバル(1100万ユーロ)、ニュルンベルクからエドゥアルド・レーベン(700万ユーロ)と1億ユーロ(約125億円)以上の投資を敢行した。
それに対して選手売却による収益は、ヴァレンティノ・ラザロ(ボルシアMGにレンタル中)をインテルへ2200万ユーロで売却したのみだ。
クラウス・ミシェル・キューネがバックにいるハンブルクも、ハサン・イスマクがスポンサーとして関わる1860ミュンヘンも、今どこにいるだろう。ハンブルクは2部リーグ3シーズン目、1860ミュンヘンは一時的に4部リーグでプレーするまで落ちていた。夢見たような欧州のトップとはほど遠い場所で、クラブの存続をかけて戦っている。口当たりがいいだけのプロジェクトではうまくいかない。
プレーツSDは「若く、ハングリーで、タレント性の豊富な選手とともに上を目指す」と語り、資金力をバックに大幅な戦力補強に乗り出した。過去の補強費レコードを次々に更新していく。
ブラジル代表マテウス・クーニャを1800万ユーロで獲得したのを筆頭に、この1年半の間にワトフォードからドディ・ルケバキオ(2000万ユーロ)、リヨンからリュカ・トゥザール(2500万ユーロ)、ACミランからクシシュトフ・ピョンテク(2700万ユーロ)、シュツットガルトからサンティアゴ・アスカシバル(1100万ユーロ)、ニュルンベルクからエドゥアルド・レーベン(700万ユーロ)と1億ユーロ(約125億円)以上の投資を敢行した。
それに対して選手売却による収益は、ヴァレンティノ・ラザロ(ボルシアMGにレンタル中)をインテルへ2200万ユーロで売却したのみだ。
確かに若く、ハングリーで、タレント性のある選手はそろった。ただ、それがチームとして機能するかとなると話は別だ。大事な要素を忘れていたのかもしれない。それはヘルタというクラブのために身を粉にする覚悟があるかどうかだ。
奇しくも同じベルリンに拠するウニオン・ベルリンは、チームスピリットと団結力を前面に打ち出し、好成績を残している。クラブとしての確かな価値観、このクラブのために全力を尽くしてくれる選手をファンは愛する。どれだけ実力があっても、肩書があっても、過去が素晴らしくても、そこは絶対に譲れない線なのだ。
「それが我々を今いる位置へと運んでくれた。ウニオンは心の力とともにあるクラブなのだ」と語るウルス・フィッシャー監督の言葉は重い。
今シーズン第18節終了時で勝点17ポイントの14位。ヨーロッパの舞台どころか、残留も危ない。直近4試合でわずか勝点1だけ。しかも優勝、CL出場権を争うクラブ相手にではなく、ビーレフェルト、ホッフェンハイム、ブレーメンと、勝点加算を想定していただろうクラブ相手の結果なので大事だ。そして、あれほどの投資で獲得した選手たちのうち、レギュラーとしてプレーしている選手はクーニャただ一人という事実だけが残った。
この結果、前述のように監督とSDは解任となり、ヘルタは新しいスタートに踏み出すこととなった。
新SDには元ドイツ代表DFアルネ・フリードリヒ、新指揮官にはパル・ダルダイが就任することになった。4年半トップチームで監督を務めたあと、ダルダイは今季U-16監督と育成コーディネーターの役職を兼任。かつて「私にはヘルタの血が流れている」とクラブ愛を語っていた彼は、チームにヘルタの魂を植えつけることができるだろうか。
現実のプロジェクトは、ゲームとは違うのだ。
筆者プロフィール/中野吉之伴(なかの きちのすけ)
ドイツサッカー協会公認A級ライセンスを保持する現役育成指導者。執筆では現場での経験を生かした論理的分析が得意で、特に育成・グラスルーツサッカーのスペシャリスト。著書に「サッカー年代別トレーニングの教科書」「ドイツの子どもは審判なしでサッカーをする」。WEBマガジン「中野吉之伴 子どもと育つ」(https://www.targma.jp/kichi-maga/)を運営中
奇しくも同じベルリンに拠するウニオン・ベルリンは、チームスピリットと団結力を前面に打ち出し、好成績を残している。クラブとしての確かな価値観、このクラブのために全力を尽くしてくれる選手をファンは愛する。どれだけ実力があっても、肩書があっても、過去が素晴らしくても、そこは絶対に譲れない線なのだ。
「それが我々を今いる位置へと運んでくれた。ウニオンは心の力とともにあるクラブなのだ」と語るウルス・フィッシャー監督の言葉は重い。
今シーズン第18節終了時で勝点17ポイントの14位。ヨーロッパの舞台どころか、残留も危ない。直近4試合でわずか勝点1だけ。しかも優勝、CL出場権を争うクラブ相手にではなく、ビーレフェルト、ホッフェンハイム、ブレーメンと、勝点加算を想定していただろうクラブ相手の結果なので大事だ。そして、あれほどの投資で獲得した選手たちのうち、レギュラーとしてプレーしている選手はクーニャただ一人という事実だけが残った。
この結果、前述のように監督とSDは解任となり、ヘルタは新しいスタートに踏み出すこととなった。
新SDには元ドイツ代表DFアルネ・フリードリヒ、新指揮官にはパル・ダルダイが就任することになった。4年半トップチームで監督を務めたあと、ダルダイは今季U-16監督と育成コーディネーターの役職を兼任。かつて「私にはヘルタの血が流れている」とクラブ愛を語っていた彼は、チームにヘルタの魂を植えつけることができるだろうか。
現実のプロジェクトは、ゲームとは違うのだ。
筆者プロフィール/中野吉之伴(なかの きちのすけ)
ドイツサッカー協会公認A級ライセンスを保持する現役育成指導者。執筆では現場での経験を生かした論理的分析が得意で、特に育成・グラスルーツサッカーのスペシャリスト。著書に「サッカー年代別トレーニングの教科書」「ドイツの子どもは審判なしでサッカーをする」。WEBマガジン「中野吉之伴 子どもと育つ」(https://www.targma.jp/kichi-maga/)を運営中