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「私は帝京へ行きたくて行ったわけじゃないんです」古沼貞雄×本田裕一郎の高校サッカー名将対談【前編】

カテゴリ:高校・ユース・その他

サッカーダイジェストWeb編集部

2021年01月05日

「学校の先生が試合を見に来てくれるなんてありえないことだった」

91年度の高校選手権では満員の国立競技場で、四日市中央工高と激闘を繰り広げた帝京高。インタビューを受ける城監督と古沼監督。写真:サッカーダイジェスト

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――古沼先生にも同じようなご苦労はあったのでしょうか。

古沼「私はサッカーで特別な経験していないですから。私は昭和39年の東京オリンピックの年に教員になるんですが、帝京へ行きたくて行ったわけじゃないんです。日大の研究室にいた時に、たまたま縁があって日大の準付属だった帝京高校というところに行ってくれないかと言われて。その学校がサッカーに力を入れようとしているけど指導者がいないということで、ぜひサッカーの指導もしてほしいと言われて行ったんですね。

 1年目から部員は30人ちょっといたんだけど、試合の日に練習試合をやるからって言われて、見に行ったんです。そうしたら、学校の先生が試合を見に来てくれるなんてありえないことだったから、みんな喜んでいて、僕は学校でモテましたよ(笑)。『試合に勝ったら、先生おごってくれる?』なんて言われて、試合のたびにおごらされてね。そういう付き合いからやってきたんです。だから、まったくもってやんちゃ坊主で悪いことをする奴らばっかりで。ほっときゃ何をするか分からない。そういうところからですよ。

 スプーン一杯の砂糖を溶かすにも数十秒はかかるように、何事もそんなに簡単にはできはしない。ましてや日本一を目指したわけじゃないんです。東京で毎年優勝するためにはというので、いま本田先生が言ったようにね、集まってくる生徒がまず一生懸命やって、そして今年も春の大会で優勝したとなると、都内の中学生が少しは見向きもしてくれる。そうやってだんだんと力を付けていく。

 帝京高校から3、4キロ離れたところに大学の後輩が教えている高校があったんですが、よくそこで地方から来たチームと練習試合をやって『負けたら走って帰ってすぐ練習だ』なんて言いましたね。そういうのが“理不尽”の最初のところだったかもしれません。

 そうやって次第に強くなって優勝を意識するようになってきて、10年目に初優勝できた。優勝すると、今度はあの黄色いユニホームを着て国立の芝を踏むんだと言って夢を持って集まってくる。それがだんだん伝統に繋がっていくんです。そして勝ち続けるために、全国の高校でやっていないだろうことをいくつも採り入れましたから。

 まずうちはグランドが狭くて野球部もいるから練習が思いっきりできない。だから、朝は野球部の奴らが練習しないからって言うんで朝練を始めて。日本で朝練習なんか始めたのは一番初めでしょうね。3度目くらいの全国優勝をした時に選手が言うんですよね。『センタリングができないと、朝来て練習をさせられた』なんて。それがサッカー雑誌で取り上げられて、朝からどんな練習をしてるとか、知れ渡っていくわけですね。朝練習だけでなくて、今度は筋トレの時代に入っていって、西が丘の国立スポーツ科学センターで本格的に筋トレを取り入れて。それで春先に0-6くらいで負けた清水東に選手権で勝って優勝するんです。長谷川健太やら、武田修宏やら黄金世代の清水東にね。

 まあとにかくグラウンドが狭いから、よそのチームへ行って対外試合にもよく出かけました。そういうふうに強くなろうと思うと、人のやらないことを必然的にやっていくんですよね」

◆古沼貞雄(こぬま・さだお)
1939年生まれ、東京都出身。1964年に帝京高の教員となり、翌年よりサッカー部監督に就任。全国優勝は、選手権6回、インターハイ3回を数える。2003年で退任し、以降は東京Vユースや流経大柏でアドバイザーを務め、08年からは矢板中央のアドバイザーとして活躍している。

◆本田裕一郎(ほんだ・ゆういちろう)
1947年生まれ、静岡県出身。1975年に市原緑高のサッカー部監督に就任し、その後習志野高ではインターハイ優勝を経験。2001年に赴任した流経大柏高では、選手権、インターハイ、高円宮杯で通算5回の全国優勝を飾った。2020年からは国士舘高校でテクニカルアドバイザーを務めている。

取材協力●
競技の問屋合同会社
https://twitter.com/kyoginotonya

構成●サッカーダイジェストWeb編集部
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