ミランの変革においてアジア人である本田が担う役割は大きい。

ビジネス面でクラブに貢献することについて何ら抵抗を持っていないと語っている本田。ミラン再建のキーマンのひとりとされる彼には、今季中にピッチ上での輝きも取り戻してほしいものだが。 (C) Getty Images
もうひとりの候補は、タイ人のビー・テチャウボン氏。イタリアでは、“ミスター・ビー”の名で知れ渡っている。
すでに、ベルルスコーニ・オーナーの別荘があるアルコレで2度会食しており、ミランの株の30パーセントを購入するという契約を結んだともいわれている(将来的な完全譲渡の可能性が契約の条項に盛り込まれているかは不明)。その金額は2億5千万から3億ユーロといわれ、ちょうど新スタジアム建設に必要とされる額と一致する。
しかし、2つの博士号を持つ41歳のミスター・ビーは、何かと疑惑の多い人物としても知られている。不動産開発のカントリー・グループ・デベロップメントの創始者サドゥワ・テチャウボン氏の長男で、自身は長期投資の部門を指揮しているが、タイ国内での評判はあまり良くない。危険と紙一重の、株の投機を繰り返しているからだ。
タイの企業家間では「信用が置けない人物」「本職はブローカー」などと陰口を叩かれているミスター・ビー。ただ、手の上で金を転がすだけで、それを2倍にも3倍にも増やす手腕にかけては一流である。
彼はミランの経営に参画するにあたって、クラブの元バンディエラ、パオロ・マルディーニを担ぎ出そうと考えている。マルディーニ自身も何年も前から、自分に相応しいポストをミランが用意するのを待っている。
もちろんこれが実現することは、マルディーニとの確執が知られているアドリアーノ・ガッリアーニ副会長が29年間握り続けた実権を失うことを意味する。それはまさに、“革命”と言えるだろう。
今、ミランの内部では何かが煮えたぎっている。ミランがイタリアや欧州で再び頂点に立ちたいのならば、こうした変革は必須だ。強力な財政面のパートナーを得られれば、黄金時代を呼び返すことも不可能ではない。もっとも、金持ちの外国人投資家を得ただけでは十分でないのは、インテルを間近で見ているミランはよく分かっている。
フロントからピッチ上まで、混乱の極みにあるミラン。これは変革の前の混乱である。そして本田圭佑は、その変革における重要なキーマンのひとりである。アジア人の本田が背番号10をつけているということは、ミランがアジアマネーを引き寄せる上で、間違いなく良き広告塔となっているからだ。
前回のこのコラムで、本田は新生ミランのよりどころであると述べたが、この日本人はピッチの外でも重要な役割を担っている。試合での評価に関係なく、本田はミランにとってまずます手放せない存在となっているのだ。
文:マルコ・パソット(ガゼッタ・デッロ・スポルト)
協力・翻訳:利根川晶子
Marco PASOTTO/Gazzetta dello Sport
マルコ・パソット
1972年2月20日、トリノ生まれ。95年から『ガゼッタ・デッロ・スポルト』紙で執筆活動。2002年から8年間ウディネーゼを追い、10年より番記者としてミランに密着。ミランとともにある人生を送っている。
すでに、ベルルスコーニ・オーナーの別荘があるアルコレで2度会食しており、ミランの株の30パーセントを購入するという契約を結んだともいわれている(将来的な完全譲渡の可能性が契約の条項に盛り込まれているかは不明)。その金額は2億5千万から3億ユーロといわれ、ちょうど新スタジアム建設に必要とされる額と一致する。
しかし、2つの博士号を持つ41歳のミスター・ビーは、何かと疑惑の多い人物としても知られている。不動産開発のカントリー・グループ・デベロップメントの創始者サドゥワ・テチャウボン氏の長男で、自身は長期投資の部門を指揮しているが、タイ国内での評判はあまり良くない。危険と紙一重の、株の投機を繰り返しているからだ。
タイの企業家間では「信用が置けない人物」「本職はブローカー」などと陰口を叩かれているミスター・ビー。ただ、手の上で金を転がすだけで、それを2倍にも3倍にも増やす手腕にかけては一流である。
彼はミランの経営に参画するにあたって、クラブの元バンディエラ、パオロ・マルディーニを担ぎ出そうと考えている。マルディーニ自身も何年も前から、自分に相応しいポストをミランが用意するのを待っている。
もちろんこれが実現することは、マルディーニとの確執が知られているアドリアーノ・ガッリアーニ副会長が29年間握り続けた実権を失うことを意味する。それはまさに、“革命”と言えるだろう。
今、ミランの内部では何かが煮えたぎっている。ミランがイタリアや欧州で再び頂点に立ちたいのならば、こうした変革は必須だ。強力な財政面のパートナーを得られれば、黄金時代を呼び返すことも不可能ではない。もっとも、金持ちの外国人投資家を得ただけでは十分でないのは、インテルを間近で見ているミランはよく分かっている。
フロントからピッチ上まで、混乱の極みにあるミラン。これは変革の前の混乱である。そして本田圭佑は、その変革における重要なキーマンのひとりである。アジア人の本田が背番号10をつけているということは、ミランがアジアマネーを引き寄せる上で、間違いなく良き広告塔となっているからだ。
前回のこのコラムで、本田は新生ミランのよりどころであると述べたが、この日本人はピッチの外でも重要な役割を担っている。試合での評価に関係なく、本田はミランにとってまずます手放せない存在となっているのだ。
文:マルコ・パソット(ガゼッタ・デッロ・スポルト)
協力・翻訳:利根川晶子
Marco PASOTTO/Gazzetta dello Sport
マルコ・パソット
1972年2月20日、トリノ生まれ。95年から『ガゼッタ・デッロ・スポルト』紙で執筆活動。2002年から8年間ウディネーゼを追い、10年より番記者としてミランに密着。ミランとともにある人生を送っている。