「リスペクト」と言わない時にこそ、「リスペクト」の精神は宿る。
そこで今日のひと言。
「リスペクトという表現を禁止せよ」
自分で言っておいて何を言うんだ? と思うかもしれないが、正直数年前から耳にし始め、今ではサッカー界に充満している、この「リスペクト」という言葉の使い方に、僕は違和感を覚えることがある。
実際に海外で「リスペクト」という単語がサッカーでよく使われているのかと言えば、そうでもないように感じる。ここタイでもあまり出てこない言葉だ。就任当初、レフェリーに対する文句が多かったスペイン人の選手に「リスペクト!」と叫んだことがあったが、ここ最近は使った記憶がない。
それが日本では、この「リスペクト」が実に様々な局面で出てくる。
「レフェリーをリスペクトしましょう」から、「対戦相手をリスペクトしましょう」「用具をリスペクトしましょう」「サッカーに関わるすべての人と物をリスペクトしましょう」……。実は、僕自身もこのような表現を、プロ選手や育成年代の子どもたち、そしてスタッフをマネジメントする際のキーワードのひとつとしていた。
言葉の意味そのものは、すごく良いことのように思う。ただこれが、上が下に対して「リスペクトしろ!」と強制するものであったり、上は下をリスペクトせず、ただ一方的に下に求めるものであったとしたら……。それは、立場の強い者が弱い者を支配し、自らを正当化するのに都合良く使われてしまうだろう。
そもそも、コーチング術としても使われるこの言葉は本当に都合の良い表現だと思う。上手く使えば他者に優しく、もっともらしくも聞こえるが、裏を返せば誤魔化しにもつながる。
では本当の「リスペクト」とは何か?
「リスペクトという表現を禁止せよ」
自分で言っておいて何を言うんだ? と思うかもしれないが、正直数年前から耳にし始め、今ではサッカー界に充満している、この「リスペクト」という言葉の使い方に、僕は違和感を覚えることがある。
実際に海外で「リスペクト」という単語がサッカーでよく使われているのかと言えば、そうでもないように感じる。ここタイでもあまり出てこない言葉だ。就任当初、レフェリーに対する文句が多かったスペイン人の選手に「リスペクト!」と叫んだことがあったが、ここ最近は使った記憶がない。
それが日本では、この「リスペクト」が実に様々な局面で出てくる。
「レフェリーをリスペクトしましょう」から、「対戦相手をリスペクトしましょう」「用具をリスペクトしましょう」「サッカーに関わるすべての人と物をリスペクトしましょう」……。実は、僕自身もこのような表現を、プロ選手や育成年代の子どもたち、そしてスタッフをマネジメントする際のキーワードのひとつとしていた。
言葉の意味そのものは、すごく良いことのように思う。ただこれが、上が下に対して「リスペクトしろ!」と強制するものであったり、上は下をリスペクトせず、ただ一方的に下に求めるものであったとしたら……。それは、立場の強い者が弱い者を支配し、自らを正当化するのに都合良く使われてしまうだろう。
そもそも、コーチング術としても使われるこの言葉は本当に都合の良い表現だと思う。上手く使えば他者に優しく、もっともらしくも聞こえるが、裏を返せば誤魔化しにもつながる。
では本当の「リスペクト」とは何か?

トレーニング中でもゲーム中でも、三浦監督が「リスペクト」という言葉を使うことはほとんどない。本来サッカーは誰にとっても平等なスポーツであり、「リスペクト」をことさら強調する必要はないと語る。
もしかしたら、「リスペクト」などと言わない時、場面にこそ、「リスペクト」の精神は宿っているのかもしれない。
つまり、誰かが誰かに「リスペクト(しよう)」と言った瞬間、「リスペクト」ではなくなると思うのだ。特にサッカーの世界では、ことさら「リスペクト、リスペクト」などと叫ぶ必要はない。レフェリーを置き、同じ人数、同じボールで同じ大きさのゴールで得点を競い合うスポーツなのだから。フェアに激しく闘い、素直にサッカーを楽しめばいいだけだろう。
違和感を持っているのは、僕だけだろうか……。
それに日本人は、よく目上の人間を尊重するように言われ、そうすることで社会がスムーズに回っている面もある。だから、指導者が「リスペクト」を言い過ぎると、どこか可笑しく(もっと尊敬を集めたいのかと……)不自然になってしまう。
もちろん、ここタイで、代表戦の時に全カテゴリーのリーグがインターバルに入る理由を「代表チームをリスペクトしているから」などとは聞かない。みんなが注目する代表マッチの時に、集中して観戦できる環境がある――。そこに、タイ代表チームへのリスペクトがあるのを僕が感じただけである。
2015年3月14日
三浦泰年
つまり、誰かが誰かに「リスペクト(しよう)」と言った瞬間、「リスペクト」ではなくなると思うのだ。特にサッカーの世界では、ことさら「リスペクト、リスペクト」などと叫ぶ必要はない。レフェリーを置き、同じ人数、同じボールで同じ大きさのゴールで得点を競い合うスポーツなのだから。フェアに激しく闘い、素直にサッカーを楽しめばいいだけだろう。
違和感を持っているのは、僕だけだろうか……。
それに日本人は、よく目上の人間を尊重するように言われ、そうすることで社会がスムーズに回っている面もある。だから、指導者が「リスペクト」を言い過ぎると、どこか可笑しく(もっと尊敬を集めたいのかと……)不自然になってしまう。
もちろん、ここタイで、代表戦の時に全カテゴリーのリーグがインターバルに入る理由を「代表チームをリスペクトしているから」などとは聞かない。みんなが注目する代表マッチの時に、集中して観戦できる環境がある――。そこに、タイ代表チームへのリスペクトがあるのを僕が感じただけである。
2015年3月14日
三浦泰年