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インバウンド効果絶大!東南アジアの英雄が地方のJクラブにやって来たら…【アジア戦略のいま #3】

カテゴリ:Jリーグ

長沼敏行(サッカーダイジェストWeb編集部)

2020年07月08日

地方であってもアジアのスーパースターがひとり入れば…

かつて水戸に在籍したグエン・コン・フォン。2019年のアジアカップではチームの主軸として8強入りに貢献した。写真:茂木あきら(サッカーダイジェスト写真部)

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 さらに、水戸がグエン・コン・フォンを獲得した背景も興味深い。茨城県は元々ベトナム政府とパートナーシップを組んでおり、ともに農業が盛んな土地柄なので、農業研修生の受け入れや特産品の輸出を行なったり、あるいは観光客を呼び込むなど交流があった。そうしたなかで、サッカーが大好きなベトナム人にとって、自国の選手が茨城のクラブにいるとなれば、見に行きたくなるもの。こうした背景もあり、ベトナムの期待のホープがJ2水戸へ移籍する運びとなった。

 当時加入したグエン・コン・フォンは茨城県の交流大使を務め、同県のPRビデオに出たり、県のPR予算がクラブにつくなどの副産物もあったという。小山氏は「新しいスポンサーとして、ベトナム航空もユニホームの背中についたんです。ベトナム航空が単一クラブのスポンサーになったのは世界中で初めて。やはり自国のスターが異国の地で頑張っているのを応援したいという気持ちが大きかったのでしょう」と世界初の事例となったスポンサー契約に価値を見いだしている。

 この契約もあり、ベトナム航空は当時、ハノイ空港と茨城空港の間でチャーター便を運航、水戸観戦ツアーが実施された。150人程のベトナム人観光客が訪れ、試合を観戦し、その後は茨城県内の観光地を回ったという。ひとりのベトナム人選手が加入したことで、地域に多くのメリットをもたらした好例だろう。

「日本政府もインバウンドを重視していますが、大都市に集中しがち。なかなか地方にその波をもたらせない中で、水戸のように地方であってもひとりのスーパースターが入ることで、これだけ多くの人が実際に訪れる事実は、スポーズツーリズムの観点でも非常に興味深い事例です。実際に2016年のスポーツ文化ツーリズムアワードでも入選しましたからね」

 グエン・コン・フォンは水戸で5試合の出場に留まり、1シーズンでクラブを退団したものの、その後2019年のアジアカップで日本代表をスピーディなドリブルで再三苦しめ、成長した姿を見せたのは記憶に新しい。今後、彼が再びJリーグの舞台でプレーする可能性も皆無ではないだろう。

 現在ではチャナティップらの活躍によって、タイを中心にこうしたインバウンド効果が顕著となり、放映権料も収益として見込まれる状況が生まれつつある。小山氏は「コンテンツの配信でも今までとは全然違う状況でみんな興味を持ってくれている。少しずつマネタイズ(収益化)していくフェーズに入ってきている」と語る。アジア戦略は今まさに具体的な形として見え始めているようだ。

第4回に続く。次回は7月9日(木)に公開。

取材・文●長沼敏行(サッカーダイジェストWeb編集部)
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