サポーターに、帰りがけに話しかけられた言葉
そんな鎌田の“覚醒”を、ファンや関係者はずっと期待し続けていた。ある日の取材帰りを思い出す。駅のホームで僕に話しかけてきたフランクフルトファンが「カマダの才能は本物だよ。1点さえ決まれば一気に流れに乗るはずさ」と語ったあと、チームソングを歌いながら陽気にビールを飲みだしたことがある。その言葉が現実になった。
チーム内における立ち位置はすでに中心選手。それだけに欠場がチームに与える影響も大きい。シャルケ戦で累積5枚目のイエローカードをもらったために次節ケルン戦は出場できない。相手選手から時に度を越えたチャージを受けながら主審がそのシーンではなく、少し遅れて笛を吹いたことにイライラし、ボールを蹴り飛ばしてしまったためだ。だがそのことにヒュッター監督は納得がいっていない様子だった。
「ダイチへのファールをもっと早くファールだと判定できたと思う。次節、彼がいない」
チーム内における立ち位置はすでに中心選手。それだけに欠場がチームに与える影響も大きい。シャルケ戦で累積5枚目のイエローカードをもらったために次節ケルン戦は出場できない。相手選手から時に度を越えたチャージを受けながら主審がそのシーンではなく、少し遅れて笛を吹いたことにイライラし、ボールを蹴り飛ばしてしまったためだ。だがそのことにヒュッター監督は納得がいっていない様子だった。
「ダイチへのファールをもっと早くファールだと判定できたと思う。次節、彼がいない」
監督の嘆きももっともだ。現在のチームには鎌田のように攻撃にアクセントを加え、変化をつけて、さらに得点機を生み出せる選手はほかにいない。
チームは勝ち点41で9位につけ、ヨーロッパリーグ予選出場権を手にできる7位ホッフェンハイムとの勝ち点差は5まで縮めている。残り2節で逆転の可能性はきわめて低いが、だからとやる前からあきらめるつもりは毛頭もない。2試合で勝ち点6はフランクフルトにとって最低条件だけに、攻撃の要として機能している鎌田の欠場は痛い。
そんな欠かせない戦力となった鎌田の契約は現在21年6月まで。クラブは早期契約延長のために交渉を続けている。
ヨーロッパリーグのギマラエス戦(19年12月12日)後には「契約延長の話は結構前というか、もう、まあ夏過ぎから『冬に話そう』とは言われているので。僕自身そんなに焦ってないので、これから考えますけど」と語っていた。
冷静な鎌田は、「そこは、代理人とうまく話し合って。でもプレーにね、ほんと集中しないとだめなんで、そこは代理人に任せるって感じです」と語っていたが、6月18日付『BILD』紙の情報によると、両者はほぼ合意に達し、サインをするの間近とみられているという。“覚醒”したこの魅力的なプレーヤーとの契約を、クラブとしてはいち早くまとめ上げたいところだろう。
筆者プロフィール/中野吉之伴(なかの きちのすけ)
ドイツサッカー協会公認A級ライセンスを保持する現役育成指導者。執筆では現場での経験を生かした論理的分析が得意で、特に育成・グラスルーツサッカーのスペシャリスト。著書に「サッカー年代別トレーニングの教科書」「ドイツの子どもは審判なしでサッカーをする」。WEBマガジン「中野吉之伴 子どもと育つ」(https://www.targma.jp/kichi-maga/)を運営中