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「俺でいいのかよ」。そして叫び出したくなる衝動を堪えながら【ファルカン・ジャパンの“10番”岩本輝雄の栄光と苦悩の記憶|EP4】

カテゴリ:連載・コラム

広島由寛(サッカーダイジェストWeb編集部)

2020年06月15日

「シュートレンジだからね。シュート一択だった」

初の先発落ちしたミャンマー戦で、途中出場から追加点をゲット。自らの存在価値を結果で示した。(C)J.LEAGUE PHOTOS

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 10番の重圧、自分でも分かる低調なパフォーマンス、「でも、そこまで悪いかな」という迷い、結果を出さなければという焦り、周囲からの辛辣な評価……叫び出したくなる衝動を堪えるしかなかった。ストレスに苛まれた。

 もっとも、カタール戦での同点弾は、テルのミドルから生まれている。ペナルティエリアの左角で柱谷哲二からのパスを受けると、自慢の左足を一閃。軸足の右足が宙に浮くほど、思い切り振り抜いた。惜しくもこれは相手GKにセーブされるが、こぼれ球を拾った北澤豪が折り返し、最後は高木琢也が押し込んだ。

 しかし、次のミャンマーとのグループリーグ最終戦は先発から外される。ファルカン・ジャパンが始動し、すべての試合でスタメンを飾ってきたが、その記録がついに途絶えた。

「前の2試合が決して良くなかったからね。しょうがないかなと思った。監督からは、先発落ちの説明はなかった。自分のポジションには、調子が良かったノボリさんが入った」

 代表では初めてベンチから戦況を見つめる。「特に何も考えていなかった。出たら、結果を出す。それしか頭になかった。批判を黙らせる意味でも」と神経を研ぎ澄ませる。
 
 日本が2-0とリードする76分、高木との交代で途中出場する。その5分後、カウンターで左サイドを駆け上がる。澤登から横パスを受けると、渾身のシュートを叩き込んだ。

「シュートレンジだからね。シュート一択だった。ミャンマーもそれほど強くなかったし」

 いくら相手との力関係があったとしても、サッカーというスポーツはそう簡単に点が取れるわけではない。とはいえ、今の自分に必要なのは、精力的なランニングでも、献身的なディフェンスでもない。ましてやアシストでもない。ゴールしかなかった。批判を覆すには、明確な結果で自分の存在価値を示すしかない。まさに、意地のゴールだった。

 このミャンマー戦、2-0のまま終われば、次の決勝トーナメント準々決勝の相手はクウェートだった。それ以上の点差がつけば韓国で、この段階で“永遠のライバル”との対戦は避けたいという声もあったが、「ベンチから特に指示はなかった」という。そもそも、ゴールという結果に執着していたテルからすれば、次の対戦相手がクウェートだろうが、韓国だろうが、「そんなことまったく考えていなかった」。

<ラストエピソードに続く>

取材・文●広島由寛(サッカーダイジェスト編集部)

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