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「俺でいいのかよ」。そして叫び出したくなる衝動を堪えながら【ファルカン・ジャパンの“10番”岩本輝雄の栄光と苦悩の記憶|EP4】

カテゴリ:連載・コラム

広島由寛(サッカーダイジェストWeb編集部)

2020年06月15日

「多分、プレッシャーはあったと思う」

10番を託されて挑んだアジア大会だったが、思うようなプレーを見せられず苦しんだ。(C)J.LEAGUE PHOTOS

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【前回までのあらすじ】
 ガーナとの2連戦が組まれた7月のアシックスカップでは、SBではなく中盤でプレーした岩本輝雄は、2戦目で嬉しい代表初ゴールを記録。ファルカン監督からは「クラブに戻ったら、とにかく点を取りに行け」と発破をかけられた。その要望どおりに得点を重ね、10月のアジア大会に向けて準備を進めていた。そして、合宿がスタート。宿舎の部屋に入ると、予想しなかった事態に直面する。

――◆――◆――

<エピソード4>
「あれ、部屋を間違えたかな?」

 宿舎の自分に割り当てられた部屋のドアを開けて中に入り、用意されていたユニホームの一式を確認すると、まずそう思った。青いユニホームには、10番が縫い付けられてあったからだ。

「10番はノボリさん(澤登正朗)だと思っていたし、俺はそれまでの6番でいいじゃんって。嬉しさというより、俺でいいのかよって」

 伝統の10番を託された。チームメイトの目が気にならなかったと言えば、嘘になる。ベルマーレでも同僚で、信頼を置いている名良橋晃とは、新背番号に関して少しだけ話をした。「ナラは、いいんじゃないって言ってくれて」。少しは気分が軽くなったが、それでも「多分、プレッシャーはあったと思う」。

 オーストラリアとの壮行試合、もはや定位置になったと言ってもいい中盤の左サイドで先発。結果は0-0の引き分け。テル自身のパフォーマンスは、際立って良かったわけでも、悪かったわけでもない。可もなく不可もなく。本人は「まあ、普通だった」と回想する。
 
 迎えたアジア大会のグループリーグ、UAEとの初戦、続くカタール戦で、日本はいずれも1-1と勝ち切れなかった。この2試合に先発したテルも、「難しかったかな。期待に応えられなかったと思う。サイドハーフで、チャンスメイクのところでほとんど何もできなかった」と悔やんだ。

 思うような活躍ができなかった理由については「どうなんだろう……そこは今も分からないんだよね。コンディションのせいにしたくないし。結果を出さないと、とは思っていたけど」と言い淀む。

 マイボールにすれば、近くの味方に当てて、すかさずスペースに動く。正確なミドルやロングキックには自信があったが、どちらかと言えば、パス&ゴーを繰り返し、手数をかけて中盤を組み立てようとする。その狙いは悪くなかったが、「状況に応じて、ダイナミックに行くところは、そうしたほうがよかったかも」という後悔もある。

 新10番の不出来に、メディアの評価は容赦なかった。なかには“闘う姿勢が見えない”といった趣旨の批判もあった。当たり前だが、闘う姿勢がないわけがない。それを上手く表現できていなかった部分はあったかもしれないが、一秒たりとも手を抜いてプレーした覚えはない。

「良い時は持ち上げられて、ちょっと悪いと、一気に落とされる。なんだよ、これって。メディアに対する不信感は確かにあった。本当にサッカーを分かってるのかって。気持ちが見えない? じゃあ、なんでもかんでもスライディングすればいいのかよって」

 やり場のない怒りを一気に吐き出した後、テルは静かに言葉を紡ぐ。

「でも、厳しく評価されるなんて、それが普通なんだよね。特に代表にもなれば。プロとしてもまだ1年目だったし、あの頃は、そういうこともよく分かっていなかった」
 
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