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憧れのカズと映画鑑賞。プロとしての振る舞いも学ぶ【ファルカン・ジャパンの“10番”岩本輝雄の栄光と苦悩の記憶|EP2】

カテゴリ:連載・コラム

広島由寛(サッカーダイジェストWeb編集部)

2020年06月13日

「もっと頑張らないと、もっと練習しないと、って思った」

キリンカップではフランスと対戦。「まるで歯が立たなかった」と世界との差を痛感した。(C)J.JEAGUE PHOTOS

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 主に守備面のパフォーマンスについて「マスコミにもだいぶ叩かれた」が、スタンドを沸かせるプレーも見せた。「ドリブルで3人ぐらい、かわしたんだよね」。だが、心から喜べない。ドリブルの方向が、“前”ではなく“横”だったからだ。

「観衆が『おおっ!』ってどよめいたけど、自分は横にドリブルしただけ。相手からすれば、怖くもなんともない。こっちはゴールに向かって進んでないんだから。ドリブルを“させられた”だけ」

 自らの力不足と世界との埋めがたい差を痛感した。だからこそ、貴重な経験であり、大きな刺激を受けた。「スピード、高さ、強さ、判断。すべてのレベルが違う。だから、もっと頑張らないと、もっと練習しないと、って思った」。

 代表デビューを果たしたこのキリンカップを思い返し、テルは「勉強することばかりだった」としみじみと語る。「練習も、試合も、マスコミの反応も、世界との差も、いろんなことを学んだ」。練習では、ポジショニングひとつとっても、「求められることに応えようと」必死だった。これまでは、所属クラブでのプレーだけに専念していればよかったが、そこに代表での活動が加わる。「リズムを掴むのが難しかったし、遊ぶ暇もなかったね(笑)」と懐かしむ。

 代表に選ばれると、取材の数も「一日に5件とか、ほぼ毎日だった」と一気に増えた。大変だったが、そのすべてに応じた。
 
 もちろん、まったく休みがなかったわけでもない。キリンカップの期間中、オフを利用して憧れのカズに映画に連れて行ってもらったことがある。

「カズさんは当然だけど、俺もJリーグに出始めていたし、歩いていたら、たくさんの人が集まってきて、凄いなって。映画はカズさんがチケット代を出してくれて、おつりをもらっていなかったから、俺がそれを受け取りに行ったら、カズさんから『戻してこいって』って怒られた」

 プロのサッカー選手として、ピッチ外でいかに振る舞うかも学んだ。

 ピッチ内に目を向ければ、キリンカップの前と後では、自分の中で明らかな変化を感じていた。「Jリーグでは、代表の試合と比べるとスピードがゆっくりというか、余裕ができた」。欲もさらに出てきた。「世界は甘くないけど、もっと代表で活躍したい」と。

 より高みを目指し始めたテルは、ある欲望が抑えきれなくなってもいた。もし次の代表でも選ばれたら、「監督に絶対に言おう」と決意を固めた。

<エピソード3に続く>

取材・文●広島由寛(サッカーダイジェスト編集部)

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