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オフト時代に初招集の可能性も「無理です」と拒否【ファルカン・ジャパンの“10番”岩本輝雄の栄光と苦悩の記憶|EP1】

カテゴリ:連載・コラム

広島由寛(サッカーダイジェストWeb編集部)

2020年06月12日

「あーあの背の高いおじさんか、って(笑)」

94年はベルマーレでJリーグ初参戦。とにかくプロの舞台で活躍することだけを考えていた。(C)J.LEAGUE PHOTOS

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 ワールドカップはおろか、日本代表も憧れてはいたが、本気で目指そうとも思っていなかった。94年の2月、「関塚(隆)さんが監督だったU-23Jリーグ選抜に選んでもらって、タイのキングスカップに出たことはある。“代表っぽい”のはそれが初めてだった」。それでも、「ノボリさん(澤登正朗)とかがいてね、『わ、選手権のスターだよ!』という感じ」で、一歩引いたスタンスではあった。

 94年は、所属するフジタがJリーグに昇格。『ベルマーレ平塚』の一員として、テルも新たなスタートを切る。「Jリーグで1年目。サッカーがブームだったし、プロの舞台で活躍したい、SBとしてとにかくアタック! ただそれだけ。代表なんて、全然」という考えだった。

 だから、オフトの後任として日本代表の監督にファルカンが就任しても、どこか他人事だった。

「もちろん、ファルカンは知ってたよ。セレソンの黄金のカルテットのひとり。82年や86年のワールドカップにも出ていてね。子どもの頃に見ていたから、あーあの背の高いおじさんか、って(笑)」

 日本代表が新たに動き出した一方で、テル自身は「ようやくJリーグのピッチに立てる、その高揚感のほうが勝っていた」。

 そんなテルを、しかしファルカンは放っておかなかった。4月に招集メンバーが発表される。「岩本輝雄」の名前がそこにあった。

「びっくりしたよ。発表の2日ぐらい前に協会からレターが届いたみたいで。クラブでの練習の後に言われて。『マジ?』って。『俺じゃないだろ、ナラだろ』とは思った。その時、たしかナラは入っていなかったから」

 初のフル代表。嬉しさよりも、驚きのほうが大きかった。まだJリーグでの実績もない。「俺にできるのかな?」。楽しみよりも、不安のほうが大きかった。
 
 ファルカン・ジャパンでの初練習では、これまでに経験したことのない環境がそこにあった。

「まずマスコミの数が違う。初日は100人以上いたんじゃないかな。代表のメンバーもテレビで見ている人たちばっかり。Jリーグで、まだ全員と対戦していなかったし、圧倒されたよ」

 だが、代表での活動を通じて心境の変化があった。招集時に抱いた不安が、楽しみに変わる。

「ベルマーレでは、SBでとにかく『前に行け!』という感じで、守備に関してそこまで言われないけど、代表では守備のタスクも重要になる。メディアからも“岩本は守備が不安だ”みたいに書かれたし、これは大変だなとは思った。でも、やっていくうちに欲が出てきた。選ばれたからには、試合に出てみたいって」

<エピソード2に続く>

取材・文●広島由寛(サッカーダイジェスト編集部)

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