むろん、ワールドカップ本番のような真剣勝負ではないが、3日前のテストマッチでルクセンブルクを7-0と下し、「手応えのない相手だった。日本戦は勝負に行く」とクリンスマン監督は明言。負傷明けのバラックを起用し、ベスト布陣を組んだドイツにとって、日本戦は単なるスパーリングというわけでもなかった。
翌日、ドイツの地元紙は「騎士が侍に切り刻まれた」と報じるほどで、ジーコジャパンのポテンシャルを改めて証明するゲームとなった。
ところが、本大会初戦のオーストラリア戦でジーコジャパンは……。
5日後のマルタ戦でもピッチに立ったのは…
ドイツ戦にピークを持っていってしまった――とは、後に指摘される敗因のひとつだが、むしろ問題は、サブ組を起用する予定だった5日後のマルタとの親善試合でも、高原、柳沢を除くベストメンバーが送り出されたことだろう。
「僕らは出ないものだと思っていた。ドイツ戦の疲れも残っていたから」と福西崇史は振り返った。疲労を残す主力組は思わぬ起用に戸惑い、サブ組はアピールの場、試合感覚を養う機会を失ってしまう。歯車はここから大きく狂っていくのだった。
文●飯尾篤史(スポーツライター)