短期連載コラム『日本代表 隠れ名勝負』vol.7 06年ジーコジャパンのドイツ戦|流れるようなカウンターで強豪国の鼻を明かす
ワールドカップやアジア最終予選、アジアカップやコンフェデレーションズカップといったメジャーな大会ではなく、マイナーな大会や親善試合においても日本代表の名勝負は存在する。ともすれば歴史に埋もれかねない“隠れ名勝負”を取り上げる短期集中連載。第7回は2006年、ジーコジャパン時代のドイツ戦を振り返る。(文●飯尾篤史/スポーツライター)
――◆――◆――
素晴らしいゴール、価値のあるゴールなら、いくつか思い浮かべることができる。
だが、“日本代表史上、最も美しいゴール”となると、これではないか。
2006年5月30日に行なわれたドイツとの親善試合で、高原直泰が決めた1点目のゴール――。
0-0で迎えた57分、ドイツのCKをクリアし、柳沢敦がヘディングで中村俊輔にボールを預けた瞬間、逆襲のスイッチが入る。中村が巧みなステップワークで2人をかわしてセンターサークル内の中田英寿へパス。中田がスルーすると、その裏でボールを受けた柳沢から相手守備陣を置き去りにするような、ふわりとしたボールが繰り出される。
そこに飛び出してきたのが、高原だった。
ドリブルで独走した高原は、GKレーマンの動きを見極め、ゴール上方に蹴り込んだ。
日本のクリアから、わずか13秒――。絵に書いたようなカウンターアタックで、開幕が10日後に迫ったワールドカップの開催国の鼻を明かした。
だが、敵将クリンスマンを青ざめさせたのは、このゴールシーンだけに留まらない。
さらに8分後、ペナルティエリア右隅でボールを受けた高原は、鋭い切り返しで3人の相手選手を手玉に取るように抜き去り、豪快に蹴り込んで見せるのだ。
02年夏にハンブルガーSVに加入した高原にとって、ドイツは第二のホーム。ハンブルガーSVでは不遇をかこったこともあるだけに、ドイツ人が注目するピッチで自身の能力を改めて証明するゴールになった。
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素晴らしいゴール、価値のあるゴールなら、いくつか思い浮かべることができる。
だが、“日本代表史上、最も美しいゴール”となると、これではないか。
2006年5月30日に行なわれたドイツとの親善試合で、高原直泰が決めた1点目のゴール――。
0-0で迎えた57分、ドイツのCKをクリアし、柳沢敦がヘディングで中村俊輔にボールを預けた瞬間、逆襲のスイッチが入る。中村が巧みなステップワークで2人をかわしてセンターサークル内の中田英寿へパス。中田がスルーすると、その裏でボールを受けた柳沢から相手守備陣を置き去りにするような、ふわりとしたボールが繰り出される。
そこに飛び出してきたのが、高原だった。
ドリブルで独走した高原は、GKレーマンの動きを見極め、ゴール上方に蹴り込んだ。
日本のクリアから、わずか13秒――。絵に書いたようなカウンターアタックで、開幕が10日後に迫ったワールドカップの開催国の鼻を明かした。
だが、敵将クリンスマンを青ざめさせたのは、このゴールシーンだけに留まらない。
さらに8分後、ペナルティエリア右隅でボールを受けた高原は、鋭い切り返しで3人の相手選手を手玉に取るように抜き去り、豪快に蹴り込んで見せるのだ。
02年夏にハンブルガーSVに加入した高原にとって、ドイツは第二のホーム。ハンブルガーSVでは不遇をかこったこともあるだけに、ドイツ人が注目するピッチで自身の能力を改めて証明するゴールになった。
そしてなにより、エコノミー症候群の影響で、日韓ワールドカップ、アテネ五輪と、世界大会の出場を2度も逃した自身の覚悟が詰まった2発だった。
「すべてはこのためにやってきた。あとは本番まで、どれだけ高めていけるか」
エースとして期待された久保竜彦が負傷の影響で選外となるなか、真のエースが復活を印象づけたのだ。
ワールドカップ開催国の意地もあって、ゲーム終盤に日本はセットプレーから2点を失い、引き分けに終わる。だが、主導権を握り続けていたのは、日本だった。