最強ヴェルディを率いた男。松木安太郎が明かす「J初代王者の神髄」(後編)

カテゴリ:Jリーグ

白鳥和洋(サッカーダイジェスト)

2020年06月09日

「初代王者」だからこそ最強

93年夏に加入したビスマルクの貢献度は戦った。バラバラ気味だったチームをまとめた、ある意味、救世主的存在だった。写真:ゲッティ・イメージ

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 大仕事をやってのけた松木は、正直、「ホッとした」。勝因はひと言で「プロの集団だった」ところにある。

「自分がピッチに立って勝ちたいと思っている選手ばかり。それはプロのチームとして当たり前。みんなギラギラしていたから、誰を使っても何かやってくれるんじゃないか。そういう期待感があった。コーチングスタッフも含め、荒削りながらも一人ひとりの意識は高かった。そういう点からも、当時のヴェルディはプロの集団だったと言えるんじゃないかな」

 週2試合の過酷なスケジュール、しかも90分で決着がつかなければ延長Vゴール(先にゴールを決めたチームが勝ち)、PK戦と今では考えられない状況下で、当時のヴェルディは戦った。それでも挫けず、最後までピッチを走り抜けたのは「俺たちこそプロ」というプライドがチーム全体に浸透していたからに違いない。

 連覇を成し遂げ、退任するまでの2年間を振り返り、松木はこう語った。

「チームに関わるすべての人間が一生懸命戦った2年間。必死に戦わないと優勝なんてできないよ。すべてを注ぎ込んで取り組んだからこそ、(93年に優勝した時、94年に連覇を成し遂げた時に)ホッとした。結果が求められるチームで、相応の結果を出す。若くなければできなかったんじゃないかな(笑)」
 
 そんな松木は、5月28日発売号のサッカーダイジェスト「Jリーグ歴代最強チームはどれだ!?」というアンケートで、1位に「93年のヴェルディ」を挙げている。だから、訊いてみた。「自分が指揮したチームを堂々と1位に選べるなんて幸せなのでは?」と。

 松木は弾んだ声で答える。

「幸せというよりも、Jリーグ元年でしょ。まだ優勝チームがいない。そこで初代王者に輝いたところに価値がある。だから“最強”と言えるんじゃない(笑)。繰り返しになるけど、コーチングスタッフ、フロント、選手全員が勝つためにどうすべきか、プロとしてどうあるべきか、そういうものを考えながらやっていた。そのあと、僕もいくつかクラブを率いたけど、この時のヴェルディは最高のチームだったよ」

 当時のヴェルディの神髄。それは、他クラブとは一線を画すプロ集団であったこと。どこよりも貪欲に勝利を求め、もがいてきたからこそ栄冠に手が届いたのだろう。

 今年で28年目を迎えたJリーグのなかで、“伝説”とも評される93年のヴェルディ。この王者を率いた松木も、“伝説の指揮官”としてJの歴史に確かな足跡を残している。<文中敬称略>

取材・文●白鳥和洋(サッカーダイジェスト編集部)

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