最強ヴェルディを率いた男。松木安太郎が明かす「J初代王者の神髄」(前編)

カテゴリ:Jリーグ

白鳥和洋(サッカーダイジェスト)

2020年06月09日

「選手と意見が対立することもあったけど…」

ラモス(10番)、ペレイラ(3番)、武田などJ屈指の実力者を揃えたV川崎はJリーグの初代王者に輝いた。写真:ゲッティ・イメージ

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 しかし、アメリカ・ワールドカップのアジア1次予選を戦っていた代表メンバーの合流も遅れ、チーム作りは思うように進まなかった。

「代表チームに7、8人取られていて、自分が監督に就任したのも結構ギリギリだったからね。いろんな意味で、準備という部分では物足りないところがあった」

 その結果、ヴェルディはスタートから躓く。横浜マリノスとの開幕戦を1-2で落とすと、続くジェフユナイテッド市原戦も1-2と2試合続けて1点差負け。チームとして機能しているとは言い難く、一部の選手から監督、フロントに対する不満の声が聞かれ、ここぞとばかりにスポーツ紙は「内紛」と騒ぎ立てる。

「確かに選手と意見が対立することもあったけど、とにかく試合に勝つにはどうすべきか、そればかり考えていたよね。とはいえ、当時は中3日で戦っていたわけで、90分で勝負がつかない場合は延長戦(Vゴール方式=先にゴールを決めたチームが勝ち)、PK戦までやっていたんだから、チームの何かを変えるという作業なんてできない。ほぼリカバリーの時間に費やしていた記憶がある。そのなかで僕が重要だと考えたのが(永井秀樹、藤吉信次、阿部良則ら)若手の突き上げ。選手を平等に見る。チームの歯車が上手く回っていなくても、そこだけはブレなかった」
 
 ブレないと言えば、ヴェルディにも確固たる武器があった。それは、読売クラブ時代から培ってきたプロフェッショナリズムだ。

「とにかくプロとして自分が活躍して、チームを勝利させたいという選手が揃っていたから。フロント、スタッフの人間も勝利に対して貪欲だったし、最高のチームだった。ヴェルディはJリーグができる前からプロフェッショナリズムを持っていたクラブ。読売クラブ時代、僕も現役の時そうだったけど、『いつになったらプロとして戦える時代が来るんだ』って思っていたから。それをずっと心の内に秘めて、Jリーグという舞台に到達したわけだから、そのプライドが簡単に打ち砕かれることはないよね。どこにも負けない、負けてたまるかというプライドがあったからこそ、苦しい時も踏ん張れた」

 サントリーシリーズこそジーコにプロ魂を注入された鹿島アントラーズにステージ優勝を譲るが(ヴェルディは2位)、続くニコスシリーズ(第2ステージ)は新戦力のブラジル人ビスマルクが先発出場した2節のガンバ大阪戦から6連勝。白星を重ねるとチームは自信を取り戻し、エースのカズもゴールを量産するようになった。シーズン序盤のアンバランスさ、さらに不穏な空気も消え、優勝に向かってチームは走り出した。

 8節の清水戦でPK負けを喫したものの、9節の浦和レッドダイヤモンズ戦を6-0でモノにすると、アメリカ・ワールドカップのアジア最終予選を挟んで10節のガンバ大阪戦から破竹の9連勝を飾ったヴェルディは、最終的に16勝2敗でステージ優勝。鹿島とのチャンピオンシップに挑むことになった。<文中敬称略/後編に続く>

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