いま、アギーレは何を思う――旧知の『マルカ』紙記者が胸中に迫る

カテゴリ:日本代表

ファン・カストロ

2015年02月04日

「選手とサポーターに直接さよならを言いたかった」

「アギーレのサッカー」を提示し、それが広く受け入れられたことが、ポジティブな側面だったとカストロ記者は語る。

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 ベスト8で敗れたアジアカップでの早期敗退は、解任という判断に影響を及ぼしたのか。直接の影響はなかったはずだが、解任を早めた可能性はある。では、優勝していれば解任はなかったか? それは今となっては想像することしかできない。
 
 日本はUAE相手に信じられないほど多くのチャンスを作ったが、それを決めきれず、PK戦の末に敗退した。不運とはいえ、敗退は敗退だ。日本サッカー協会はその後、告発が受理されたのかどうかを確認し、受理という答を得て解任の結論に至った。個人的には、早まった決断だったと思う。
 
 アギーレにとって解任を言い渡された2月最初の火曜日は、30年に及ぶそのサッカー人生で最も辛い一日だったのではないか。家族も肩を落としていた。ずっと近くで彼を見てきた私には、その心中は察するに余りある。
 
 解任の電話を日本サッカー協会会長から受けたその日、アギーレはずっと家族と過ごしていた。世界中の多くの記者が自分を探しているのは分かっていたが、その日は話す気にはなれなかった。熱意を持って取り組んでいたプロジェクト、日本代表をロシアの地で躍進させるという仕事を、いわば途中で取り上げられたのだ。
 
 結果的にアギーレは在任期間が半年と短命に終わった。アジアカップで結果を残すこともできなかった。それでも、その仕事ぶりは選手に好意的に受け取られていた。アギーレがもたらした新たなメソッドを誰もが新鮮に受け止め、意欲的に吸収しようとしていた。
 
 アギーレの目標は、日本サッカーに競争と勝負強さを植え付けることだった。良い流れに乗って進みはじめていただけに、失望は小さくなかったはずだ。
 
 いま、アギーレはともに戦った選手とサポーターに感謝している。本来なら直接彼らにさよならを言いたかった、と彼は言う。
 
 アギーレに対する日本の世論は二分していると聞く。しかし、どんな意見の持ち主に対してもアギーレは感謝している。この半年間、日本で受けたもてなしを、彼は忘れることはない。日本中どこへ行っても、日本人は愛情とリスペクト、節度を持って接してくれたのだから。
 
 アギーレの日本での冒険がこんな形で終わるのは残念でならない。しかし日本には日本の考えがある。アギーレ自身、それは十分に理解し、その考えや国民性を変えるつもりは毛頭ないと言う。
 
 アギーレの半年間には、ポジティブ、ネガティブの両面があった。
 
 ポジティブだったのは、彼が選手と日本サッカー界に「アギーレのサッカー」を提示し、それが広く受け入れられたこと。
 
 ネガティブだったのは、それがわずか5か月しか続かなかったことだ。
 
 アギーレが日本サッカーをどう変えるのか、それを見てみたかったのは私だけではないだろう。
 
文:ファン・カストロ(マルカ紙記者)
翻訳:豊福晋
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