アジアカップ2015

アギーレは日本サッカーとどう向き合い、何を変えようとしていたのか

カテゴリ:日本代表

熊崎敬

2015年02月04日

監督の手腕だけでは補いきれない問題が横たわる。

W杯に続きアジアカップでも結果を残せなかった日本代表。今回の解任劇が育成・強化を見直すきっかけになれば……。 写真:小倉直樹(サッカーダイジェスト写真部)

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 アギーレの4-3-3は、一人ひとりの能力を容赦なく炙り出した。本田や岡崎慎司、遠藤保仁など主力の多くが配置転換された。これで厳しくなったのが香川である。
 
 ザックジャパンは、ある意味で香川の能力を生かすためのシステムが組まれていた。
 ゴールに近いところで、つねにサポートの選手に囲まれながら前を向いて勝負ができた。
 
 だがインサイドハーフに持ち場が変わったことで、彼の世界は一変した。ゴールは遠く、味方も遠い。中央にいるため1対1の守りが求められ、カウンターのリスクが高いため迂闊にドリブルで仕掛けられない……。
 
 仕事もそうしているように、日本人はサッカーでも組織を優先させる。大勢で守り、大勢でつなぎ、大勢で攻める。だが、こうなると失点が誰の責任なのか分からない。個々の責任の範囲が曖昧になるという弊害が生まれていた。
 アギーレはシステムを変えることで、そこをはっきりとさせたのだ。
 
 アギーレは日本サッカーを変える可能性を秘めていた。
「自分たちのサッカー」を解体し、長く日本が目を背けていた、地に足のついた強い個人が強い組織を編む、骨太のサッカーが始まるかもしれない……。そう考えていた矢先の解任劇だった。スポンサー筋がアギーレに拒否反応を示したのだろう。
 
 だが、私はそれほど残念だと思っていない。
 アギーレはいい監督だと思うが、監督が代わるのはよくあること。これもサッカーの一部だろう。
 
 また、いまの日本サッカー界には監督の手腕だけでは補いきれない育成の問題が横たわっているからだ。
 
 Jリーグはチームは増えたが選手が育たず、育成年代の代表チームもアジアで勝てなくなった。
 アギーレ監督はアジアカップで同じメンバーばかり起用したが、気持ちは分かる。アジアカップレベルでも安心して使える選手がJリーグにはいないのだ。同じメンバーに固執しすぎたが、誰が監督をしても似たようなことになったと思う。
 
 普及は上手くいっているのに、良い選手が出てこないというのは、サッカー協会とJリーグの問題だ。特にサッカー協会はビジネスだけが先行して、肝心の強化が疎かになっていた。
 
 今回の解任劇を機に、一から問題を見直すことができるのなら、それも悪くない。あまり期待はできないが。
 
文:熊崎敬
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