【黄金の記憶】「逃げ出しそうになった…」15歳の天才・小野伸二を襲った“特大の衝撃”

カテゴリ:Jリーグ

川原崇(サッカーダイジェストWeb編集部)

2020年05月05日

「一番サッカーを楽しんでた時期かもしれない。いま思えば、ね」

名門・清水市商高時代。1年からレギュラーを張った小野だが、冬の選手権には一度も到達できなかった。(C)SOCCER DIGEST

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 やがて中学を卒業し、“キヨショウ”こと名門・清水市立商業高校(現・清水桜が丘高校)の門を叩く。入部してまもなく、それまでのサッカー人生で味わったことのない衝撃を受けたという。

「小学校から中学校に上がったときって、それはそれでフィジカルの違いとか厳しさを感じたけど、それどころじゃなかった。すぐに『これは付いていけないな』と思って、最初逃げ出しそうになりましたから。冗談じゃなく。練習がハードすぎて、フィジカルが通じないうえに無茶苦茶スピードが速い。本当にどうにもならなかった」

 全国区のタレントが集う強豪校で小野は、1年時からレギュラーを張った。インターハイや全日本ユースで優勝を飾り、最終学年はキャプテンとして最強メンバーを率いたが……。高校選手権だけは一度も出場できなかった。シンジの七不思議のひとつだ。

「もちろん悔しかったけど、自分はこれからプロになるし、そこで成功すれば忘れられるって考えてました。あの頃は。だけど、最近になって思うんですよ。僕はいまでもサッカー選手でやってるけど、当時の仲間たちにとって選手権ってのは、やっぱり大事な存在だったんだなって。あそこに行ってる行ってないで、その後の人生がもしかしたら変わっていたかもしれない。そう考えたら申し訳なかったなって思います」

 いかにも小野らしい。だが、当時のチームメイトの誰ひとりとしてそうは考えていないだろう。わたしが知るかぎり、メンバーの多くはいまでも誇りに感じている。小野伸二と同じ校庭で汗を流し、ボールを追い、そして涙を流したことを。

 
 フットボーラーとしての礎を築いたキヨショウでの3年間は、かけがえのない日々だった。

「サッカーの厳しさを教わった3年間でしたね。仲間の大切さ、先輩後輩の信頼関係、チームとして一丸となって戦う姿勢。毎日毎日、必死に食らいついて、とことん追い込んでました。でもいま思えば、高校の3年間とプロ1年目にかけてが、一番サッカーを楽しんでた時期かもしれない。いま思えば、ね」

文●川原崇(サッカーダイジェストWeb編集部)

※2017年4月掲載分より抜粋、再編集。

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