「悔しいとか思ってた自分が恥ずかしくなった」

前夜に足の甲を骨折し、大一番の出場が叶わなくなった小野。それでも気丈に振る舞い、翌日のチーム練習では笑顔を振りまいた。写真:滝川敏之

重要な敵地でのバーレーン戦で、躍動した小笠原。強力ミドルで決勝点を挙げ、奮迅の働きを見せた。(C)REUTERS/AFLO
日本でのキリンカップで散々なパフォーマンスに終始し、ジーコジャパンへの風当たりは日増しに強くなっていた。
チーム内にも不穏な空気が立ち込め、中東入りしてからもムードが高まってこない。そこで危機を察した主将の宮本恒靖が呼びかけ、選手だけで話し合いの場を設ける。上も下も関係なく大いに意見をぶつけ合った。大事な2連戦(バーレーン戦と北朝鮮戦)を前に、チームはなんとか一枚岩となれた。いわゆる「アブダビの夜」だ。
その翌日だった。バーレーンに移動した直後の練習で、小野が右足の甲を骨折してしまう。2日後のバーレーン戦はおろか、長期離脱を懸念されるほどの怪我だった。
ミツオは、よく覚えているという。
「シンジ自身、出れなくなってそうとう悔しかったと思う。それだけ大事な試合だったからね。でもさ、怪我した後なのに心配させまいと、食事の時とかでも、みんなの前でニコニコしてて……。その直後、俺が代わりに出るような雰囲気になって、声をかけてくれた。『頑張れよミツ、応援してるからな』って。このひと、本当にすげぇなと思った。ずっとシンジが出てて俺が出れなくて、多少なりとも悔しいとか思ってた自分が恥ずかしくなった。バーレーン戦は、シンジに頑張ってくれって言われたから、頑張っただけだよ。シンジの代わりを果たしただけ。自分の感情を抑えて笑顔で振る舞って、代わりに出るヤツに頑張れって……。感じるものはすごくあったし、いまでも忘れられない」
チーム内にも不穏な空気が立ち込め、中東入りしてからもムードが高まってこない。そこで危機を察した主将の宮本恒靖が呼びかけ、選手だけで話し合いの場を設ける。上も下も関係なく大いに意見をぶつけ合った。大事な2連戦(バーレーン戦と北朝鮮戦)を前に、チームはなんとか一枚岩となれた。いわゆる「アブダビの夜」だ。
その翌日だった。バーレーンに移動した直後の練習で、小野が右足の甲を骨折してしまう。2日後のバーレーン戦はおろか、長期離脱を懸念されるほどの怪我だった。
ミツオは、よく覚えているという。
「シンジ自身、出れなくなってそうとう悔しかったと思う。それだけ大事な試合だったからね。でもさ、怪我した後なのに心配させまいと、食事の時とかでも、みんなの前でニコニコしてて……。その直後、俺が代わりに出るような雰囲気になって、声をかけてくれた。『頑張れよミツ、応援してるからな』って。このひと、本当にすげぇなと思った。ずっとシンジが出てて俺が出れなくて、多少なりとも悔しいとか思ってた自分が恥ずかしくなった。バーレーン戦は、シンジに頑張ってくれって言われたから、頑張っただけだよ。シンジの代わりを果たしただけ。自分の感情を抑えて笑顔で振る舞って、代わりに出るヤツに頑張れって……。感じるものはすごくあったし、いまでも忘れられない」
鬼気迫るプレーで中盤を牽引し、決勝点も挙げる奮迅の働き。ゴールを決めた後には、めずらしく雄叫びを上げた。
友に捧げる、会心の一撃だった。
文●川原崇(サッカーダイジェストWeb編集部)
※2017年6月掲載分より抜粋、再編集。
【PHOTO】小笠原満男の華麗なるキャリアを厳選メモリアルフォトで振り返る!
友に捧げる、会心の一撃だった。
文●川原崇(サッカーダイジェストWeb編集部)
※2017年6月掲載分より抜粋、再編集。
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