【風間八宏コラム/自分に、期待しろ】「意識すべき“目”の重要性と怖さ」

カテゴリ:Jリーグ

サッカーダイジェスト編集部

2020年05月02日

素晴らしい力を持った選手を見抜く大切さ

 ではそうした人材と出立った時にどうするべきなのか。おこがましく指導するというわけではなく、長い目で見守ってあげることが大切です。

 余談ですが、私も学生時代は背が低く、足も遅く、国体の代表に選ばれても、練習試合でさえ使ってもらえないこともありました。でも、自分を認めてくれた多くの先生方の後押しのお陰で試合にも出られ、ワールドユースの日本代表にも選ばれ、ここまでやってこられた。ひとりだけで大成するのは難しい。数々の苦難を乗り越えるには、周囲の助け、そしてその子の力を評価できる“目”が必要なわけです。

 人は自分の尺度から逸脱するものをなかなか許容できません。ただ、自分に見えているものがすべてだと決めつけて行動するのと、自分が想像できない世界があると理解したうえで行動するのでは、まったく異なります。そこに気付くのが大切なのではないでしょうか。

 今のサッカー界では、アスリート能力の高い選手が評価されるようになっていて、いわゆる“天才”と呼ばれるプレーヤーが減っているように感じます。その背景には周囲の人たちの目も関係しているはずです。足が速い、技術がある、そうした能力も重要です。でも繰り返しになりますが、表には見えない素晴らしい力を持った選手を見抜けるようになることも大切なんです。
 今の時代、AIの発達が進み、自動車は人間よりも“目”が良くなっています。自動運転の技術も進み、手動よりも正確に走れるようになっていますから。スピードや頑丈さが重視されていた一時代前からポイントが変わっているわけです。私たちもそうした流れに沿えないか。

  限られた選手にしか見えない世界は、周囲の人たちと共有することは難しい。でも彼らのビジョンを私たちが垣間見ることができれば世界は広がる。数値化できない力をどう評価し、視覚化するのか。難しい挑戦だとは思いますが、それがこれからのサッカー界にとって大きなテーマではないでしょうか。

■PROFILE
かざま・やひろ/1961年10月16日、静岡県生まれ。現役時代はドイツのレバークーゼンやレムシャイトなどでプレーし、89年の帰国後にはマツダSC(現・広島)に加入。93年のJリーグ開幕戦(対市原/現・千葉)では、開始1分にチーム第1号&日本人Jリーグ初ゴールを決めた。97年の引退後は解説者を務め、97年から04年まで桐蔭横浜大、08年から12年まで筑波大を指揮。12年4月からは川崎、17年1月からは名古屋を率い、魅力的なパスサッカーで大きな話題を集めた。

構成●サッカーダイジェスト編集部

※『サッカーダイジェスト』2020年2月27日号より転載。
【関連記事】
【風間八宏コラム/自分に、期待しろ】「あなたは何が見えていますか?」
風間八宏が選ぶJ歴代ベスト11「伸二と嘉人は日本が生んだ天才」
中村憲剛が選ぶJ歴代ベスト11「恩人のジュニーニョはやっぱり外せない!」「中盤のポイントは…」
大久保嘉人が選ぶJ歴代ベスト11「憲剛さんは“別格”。ヒデさんは強烈だった」
森保ジャパン再検証<攻撃的MF編>“三銃士”を軸に定位置争いは大混戦!長友絶賛のスピードスターには決定力も

サッカーダイジェストTV

詳細を見る

 動画をもっと見る

Facebookでコメント

サッカーダイジェストの最新号

  • 週刊サッカーダイジェスト なでしこJに続け!
    4月10日発売
    U-23日本代表
    パリ五輪最終予選
    展望&ガイド
    熾烈なバトルを総力特集
    詳細はこちら

  • ワールドサッカーダイジェスト 世界各国の超逸材を紹介!
    4月18日発売
    母国をさらなる高みに導く
    「新・黄金世代」大研究
    列強国も中小国も
    世界の才能を徹底網羅!!
    詳細はこちら

  • 高校サッカーダイジェスト 高校サッカーダイジェストVo.40
    1月12日発売
    第102回全国高校選手権
    決戦速報号
    青森山田が4度目V
    全47試合を完全レポート
    詳細はこちら

>>広告掲載のお問合せ

ページトップへ