ガンバ悲願のJ1初制覇──。夕暮れの等々力で、橋本英郎の言葉に涙した【取材記2005】

カテゴリ:Jリーグ

川原崇(サッカーダイジェストWeb編集部)

2020年05月02日

ナビスコカップ決勝で惜敗。日野優はスタンドを指さして…

2005年、ナビスコカップ決勝。ジェフに敗れたガンバは「オリジナル10」で唯一の無冠チームとなった。(C)SOCCER DIGEST

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 誰もが、タイトルを切望していた。タイトルをひとつでも獲れば、このチームはさらに劇的に飛躍できると信じていた。だが、ことはそう容易くは運ばない。

 シーズン序盤は勝ったり負けたりの不安定な戦いぶりで、拍子抜けするほどだった。ようやく夏場の連戦にあって、省エネスタイルを模索した西野監督の策が奏功し、新加入のアラウージョが水を得た魚のごとく大爆発する。当時はのちの代名詞となるポゼッション型はさほどでもなく、ボールを奪うや遠藤や二川のパスを起点に、大黒、アラウージョ、フェルナンジーニョらアタッカー陣が一斉に敵陣へ雪崩れ込む、ケンカ殺法に近かった。

 指揮官は「4点取られても5点取って勝て!」と発破をかけ、極端なまでの前傾姿勢にあって、最終ラインの山口は「守るほうからしたら大変。でもガンバらしくて面白いでしょ」と胸を張った。

 そして第22節(9月3日)のFC東京戦を1-0でモノにして、チームは5年ぶりのJ1首位に立った。それからも確実にポイントを稼ぎ出し、一時は2位に5ポイント差を付ける快走ぶりを見せる。初タイトル奪取への期待が膨らんだ。

 A代表や年代別の日本代表で奮闘する選手たちが、チームに戻っては経験を還元していたのも印象深い。とりわけドイツ・ワールドカップのアジア最終予選で鮮烈ゴールを決め、“時のひと”となっていた大黒は、あらゆる面で驚異的な成長を遂げていた。

 しかしながら──。第28節(10月22日)の大分トリニータ戦を1-2で落としたあたりから、雲行きが怪しくなる。対戦相手の多くが専守防衛の戦法を採用し、自慢の高速カウンターを封じ込めにかかると、臨機応変さに欠ける西野ガンバはそこかしこでパニックを起こすようになる。

 
 一方でガンバは、ナビスコカップも順調に勝ち上がり、11月5日にジェフ千葉との決勝を迎えた。まずはここで初タイトルを奪取して重圧から解放され、リーグ戦、天皇杯の三冠を達成するのが最上の夢物語。だが手に汗握る攻防の国立決戦は、0-0のまま延長戦でも決着が付かず、PK戦の末にガンバは敗れ去った。

 怪物エムボマを牽引車に快進撃を続けた1997年第2ステージと、優勝まであと一歩に迫りながら絶頂期のジュビロに叩きのめされた2002年。いずれもよく奮闘したが、冷静に考えれば優勝に値するチーム力ではなかった。ただ、このチーム2005はこれまでとは違う。どこにも引けを取らない総合力を、ついに手に入れたと信じ切っていた。

 やはりどうしても、勝負弱いのだ。もはやこのクラブに沁みついた悪しき伝統なのか。ジェフが初戴冠を遂げたことで、J創設以来のいわゆる「オリジナル10」でタイトルをひとつも獲っていないクラブは、ガンバを残すのみとなった。

 試合後の表彰式の最中、落ち込んでいる私に声をかけてきたのは当時23歳の第3GK、日野優だった。彼は歓喜に沸くジェフ・サポーターのほうを指さし、「むっちゃエエ光景やないですか。次は僕らがあの喜びを与える。そうポジティブに考える意味でも、しっかりあの光景を目に焼き付けましょうよ!」と言い放ち、喝を入れられた。

 意外な男の意外な言葉に、グウの音も出なかった。
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