「ざまぁ見やがれってんだ!!」。山形のクラブ史に残る"名物理事長の痛快なひと言”

カテゴリ:Jリーグ

頼野亜唯子

2020年04月30日

GK山岸範宏の決勝ゴールと並ぶ名場面

山形一筋プロ13年目の山田。一昨季、昨季に続き今季もキャプテンを務める。写真:徳原隆元

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 十数年が過ぎた今の地点から眺めると、物語はさらに厚みを増している。2007年に海保氏の肝入りで鹿島から加入した石川竜也(現・山形ジュニアユース監督)は、2度の昇格に貢献して2017年まで活躍を続け、山形のレジェンドとして引退した。

 また、鹿島のカリスマスカウトとして職を全うし第一線を退いていた平野勝哉氏を、半ば強引に引き入れたのも海保氏だった。その平野氏が強化育成アドバイザーとして獲得に関わった選手の一人、山田拓巳は今、主力でありキャプテンでもある山形の顔として13年目のシーズンを迎えている。あの頃海保氏が仕込んでいった核が、何年も経って大粒の真珠になって輝いている。そんな思いを強くする。
 
 初めてのJ1を戦い、大方の予想を裏切って残留した2009年シーズンの最終節。シーズン終了の理事長挨拶で、クラブ史に残る名言が飛び出した。
 
 「ざまぁ見やがれってんだ!!」
 
 シーズン前、こぞって山形の最下位を予想した人々に向けて意気揚々と言ってのけた言葉に、選手たちは相合を崩し、スタンドはやんやの喝采。チームとフロントとサポーターの一体感が伝わってくるシーンだった。番記者的には、2014年昇格プレーオフ準決勝でのGK山岸範宏の決勝ゴールと並ぶ名場面だと思っている。

 2010年3月、海保氏は健康上の理由もあり理事長職を勇退。地元の千葉県に活動の場を移した。山形は翌’11年に降格してしまったが、14年、山岸範宏の劇的ゴールで昇格プレーオフ決勝に進出。ファイナルの舞台となった味の素スタジアムのスタンドに、応援に駆けつけた海保氏の姿があった。しかし、山形の2度目の昇格を見届けると、2015年4月に逝去。73歳だった。

 
 海保氏が山形を去って10年になる。その間、モンテディオ山形は株式会社に移行し、プロサッカークラブとしての体制強化は着実に前進していると言っていいだろう。19年には楽天野球団、ヴィッセル神戸でキャリアを積んだ相田健太郎氏が社長に就任。その手腕の下、クラブの事業戦略にはこれまで以上にダイナミックな動きが生まれている。

 昨年の平均入場者数は、チームの好成績の追い風もあり1試合平均8289人と大幅に増加。広告料や物販による収益も増やし、営業収益は18億4500万円と過去最高の数字を叩き出した。

 しかし、今季は新型コロナウィルスの影響で、何もかもが不透明なままだ。クラブ経営は厳しいものになるだろう。それでも、そんな厳しいタイミングに、思い切った意思決定のできるトップに率いられるクラブは幸運だ。

 チームを強くするにはクラブが力をつけなければならない。クラブ力があってこそのチーム力なのだ。海保氏がその意識をクラブに植え付けたからこそ、山形は今いる場所へ進んでこられた。そう思えてならない。

取材・文●頼野亜唯子(フリーライター)

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