【番記者コラム】ジェフを変えたオシムのサッカー哲学。改革は就任前から始まっていた

カテゴリ:Jリーグ

赤沼圭子

2020年04月26日

オシム就任前にベースは作られていた

2005年にチームはナビスコカップ(現ルヴァンカップ)を初制覇。ひとつの成果を示した。(C)SOCCER DIGEST

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 もっともリスクを冒すことを恐れず、攻守両面でアグレッシブに戦うというオシム監督のサッカー哲学を実践して結果を残した千葉は、その指揮官の就任で劇的に変化して強くなったと思われがちだが、実はそうではない。劇的な変化は確かにあったのだが、強くなるためのベースはその前から作られていた。

 2000年のシーズン終盤に就任したズデンコ・ベルデニック監督は、攻守で組織的に戦うことを改めて選手に植え付け、特に守備ではゾーンプレスを基本に、献身的にプレーすることを求めた。

 選手個々の能力を組織の規律の中で活かすように指導し、千葉は2001年のリーグ戦の第1ステージで2ステージ制ではクラブとして最高位の2位となり、年間順位は3位。そのベルデニック監督が名古屋の監督に就任したため、2004年に千葉を率いたジョゼフ・ベングロシュ監督はベルデニック監督よりも選手の自主性を求める指導で、年間順位は7位と振るわなかったが、規律と自主性の二面を経験して下地を作った選手たちは、オシム監督の指導をよく吸収した。

 また、オシム監督が選手はもちろん、クラブスタッフにも求めていたのが『勝者のメンタリティ』だった。オシム監督は当時の千葉のクラブの体質を、現状に満足して挑戦していないと評した。

 しかし、強化スタッフはJ1残留争いを繰り返すチームを変えるべく、『勝つこと』『優勝すること』を体験し、それにこだわれる選手の獲得に動いていた。その一例が2002年に加入した羽生直剛と2003年に加入した巻誠一郎で、ふたりは2001年ユニバーシアード北京大会で優勝したチームの一員だった。

 2001年には韓国代表のエースのチェ・ヨンス、読みの上手さと堅実なプレーが光るスロベニア代表のゼリコ・ミリノビッチを獲得し、攻守それぞれで核となる選手がチームに存在した。

 さらに、アカデミーからトップチームに昇格した阿部勇樹や佐藤勇人の成長もあり、オシム督就任時にタレントが揃いつつあったのも、好成績につながる要因となっていた。
 
 実際の指導はもちろんのこと、オシム監督が語る言葉はウィットに富みながらも哲学的で、サッカー界を超えて『オシム語録』として有名になった。選手たちは例えば「ハーフタイムに監督が言っていたことが後半にはそのとおりになる」と話し、オシム監督が発する言葉の重要性を理解していた。

 トレーニングの内容や試合における戦術などの指導とはまた別に『言葉』に力を持った指導者だったからこそ、千葉をあそこまで大きく変えることができたのだろう。

 相手の内心を見透かすような鋭い眼光が印象的だったオシム監督は、取材者にとっては質問にきちんと答えてくれるのか心配してしまうという意味で、非常に緊張する指導者だった。千葉というクラブだけでなく取材者までも鍛え、変化をもたらしたのは間違いない。

取材・文●赤沼圭子(フリーライター)
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